人工タンパク質シルクエラスチン®
軟骨や半月板の損傷・変形は変形性膝関節症につながり、ひいては運動機能低下のリスクを生み、いわゆるロコモティブシンドロームに影響を及ぼします。また近年、膝関節疾患の根治には半月板の修復・再生が重要であることが明らかになってきたため、半月板機能温存『縫合術』の実施件数が増加していますが、半月板は一度損傷すると修復されにくいため、世界で年間300万件にも及ぶ変形性膝関節症の縫合術に対し約30%は癒合不十分となり、再断裂を起こすことが課題でした。
半月板再生材用途におけるシルクエラスチン
このような背景から、広島大学の研究グループは、当社のシルクエラスチンを応用して膝関節軟骨と半月板の双方を再生する“究極の根治”をコンセプトに共同研究を進めてきました。
シルクエラスチンは、当社が技術導入し、遺伝子組み換え技術により作製された日本初の人工タンパク質です。ヒトの細胞との親和性が極めて高いため生体組織の修復・再生促進のための細胞増殖の環境をつくりだします。このほど効果と安全性が確認された医師主導治験では、驚異的な結果であるとのコメントが寄せられました。
創傷治癒材用途におけるシルクエラスチン
慢性創傷(糖尿病性足潰瘍など)や急性創傷(熱傷など)の分野では、既に京都大学との共同研究によって、従来治療では治癒が期待できなかった傷に対する医師主導治験を終えており、企業治験でも極めて良好な結果が得られたことから、2024年度中の薬事承認取得と2025年度中の販売開始を予定しています。
期待される市場と将来性
シルクエラスチンの市場規模は、半月板再生材用途においては世界で1,000億円以上が見込まれ、このうち米国が半数以上を占めています。褥瘡(創傷)用では、創傷治癒力とハンドリング性の良さから、シルクエラスチンと競合する医療機器(人工真皮、NPWT※)との置き換えを狙っています。
優れた治癒能力と治癒期間の短縮など強力な優位性があるシルクエラスチンは用途と適用性の幅が広く、筋肉再生材用途など現在10以上の研究テーマを推進しています。今後はまず創傷治癒用途で実績をつくり、将来的には市場規模の大きい半月板再生材用途で2030年を目標に当社事業の柱に育成していく計画です。
- 局所陰圧閉鎖療法
シルクエラスチン開発の経緯
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- JST:独立行政法人科学技術振興機構
- AMED:国立研究開発法人日本医療研究開発機構
持続可能な農業システムの構築へ
日本では農業従事者の高齢化や担い手不足が顕在化し、世界では、化学肥料・農薬、温室効果ガスの削減や水質・土壌汚染の低減が大きな課題となっています。三洋化成はこれまで培った界面制御技術をはじめとする化学技術によって、農業分野の課題に応えるソリューションの提供を目指しています。
ペプチド農業
当社では、植物に不足している性質を発現させ、従来の品種改良と比較して安心で簡単に植物のさまざまな機能を引き出すことができる農業用ペプチド※を研究開発しています。気候変動などによって植物が受けるストレスに対する耐性を付与することで、農作物の収量や品質の向上が期待できることから、新たなペプチド農業の確立と農業支援を本格展開していきます。
- ペプチドは植物の代謝や組織間の情報伝達の要として働き、生育環境への適応や耐性向上などに欠かせない重要な成分
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匂いセンサー
人間は、五感によって情報を集め、状況を把握し、判断を行っていますが、このような感覚に頼った指標は、データの信頼性や再現性、共有・蓄積が難しいなどの課題があります。中でも嗅覚を可視化するセンサーは、膨大な匂い成分の種類と匂いを認識するメカニズムの複雑さから、五感の中で最も開発が遅れていました。
匂いセンサー『FlavoTone®(フラボトーン)』発売
2023年11月、当社は人の嗅覚と同様のメカニズムで、複雑で多様な匂いを可視化できる匂いセンサー『FlavoTone®』の販売を開始しました。特定の匂いだけでなく複雑な匂いが可視化できるため、匂いによる品質管理、特性比較、モニタリングといったソリューションを提供します。
また得られたデータを機械学習に解析させるアプリケーションも搭載し、品質管理、特性比較、モニタリングなど、ニーズや用途に合わせたアウトプットが可能です。
フラボトーン事業推進部には、さまざまな方面からの共同研究の引き合いがあり、2030年には営業利益10億円を目指しています。