気候変動への対応

方針

化学メーカーである三洋化成グループは、自社事業所で排出するGHGを削減するだけでなく、CO2排出量削減に貢献する製品群を開発・提供することで社会全体のカーボンニュートラルに貢献していきます。また、さまざまな施策により省エネルギー活動を積極的に実施しており、エネルギー消費量削減につとめています。

目標と実績

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環境活動計画21-24 2019年度
(基準年)
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 評価 2024年度
目標
温室効果ガス排出量(万トン) 31.1
国内:17.6
海外:13.5
30.8
国内:15.7
海外:15.1
27.6
国内:15.3
海外:12.3
25.5
国内:14.6
海外:10.9
23.1
国内:12.3
海外:10.8
目標基準内で推移 29.5以下
削減割合(2019年度比) 1% 11% 18% 26% 5%以上
エネルギー消費量(万kℓ) 14.7
国内:9.0
海外:5.7
14.6
国内:8.1
海外:6.5
13.2
国内:8.1
海外:5.1
12.3
国内:7.8
海外:4.5
10.8
国内:6.5
海外:4.3
目標基準内で推移 14.0以下
削減割合(2019年度比) 1% 10% 16% 27% 5%以上

対象範囲:三洋化成全事業所、国内関係会社全社、生産拠点を持つ海外関係会社

  • サンヨーケミカル・テキサス・インダストリーズLLC、サンヨーカセイ(タイランド)リミテッド、三洋化成精細化学品(南通)有限公司、三大雅精細化学品(南通)有限公司、SDPグローバル(マレーシア)SDN.BHD.

GHG排出量削減
・省エネルギー

GHG排出の現状(2023年度)

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排出/吸収/削減貢献 区分 GHG種別 数量(CO2換算)
負荷 排出 事業所内での燃料使用による排出(Scope1) 10.5万トン
        メタン(浄化槽から発生) 30トン
        亜酸化窒素(燃焼時副生物) 156トン
        その他温室効果ガス(NF3、PFC、SF6 排出なし
        冷凍機等から漏出したフロン類 241トン
事業所で購入する電気・蒸気・熱の使用による排出(Scope2)(マーケット基準) 12.6万トン
サプライチェーンでの排出(Scope3) 191.1万トン
負荷低減 吸収 森林吸収量(間伐事業によるCO2吸収増分) 20トン
削減貢献 CO2削減貢献製品によるユーザーでのCO2削減効果 53.5万トン

事業所で排出されるGHGのうち、CO2以外のものは、浄化槽起因のメタンと燃焼副生物である亜酸化窒素および冷凍機などから漏出したフロン類です(CO2換算で合計427トン)。これらCO2以外のGHGは、Scope1+2の排出量に対し0.19%とごく僅かで、Scope3も含めサプライチェーン排出のほぼ全量がCO2です。

≫ Scope別GHG排出量データ

中長期のGHG(Scope1+2)排出量削減目標

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年度 グループ目標値(CO2換算) 備考
2013年 30.9万トン 基準年
2030年 15.4万トン 中間目標(基準年比半減)
2050年 ネットゼロ 最終目標(カーボンニュートラル達成)

エネルギー消費量(Scope1+2)

エネルギー消費量(Scope1+2)

GHG排出量(Scope1+2)

GHG排出量(Scope1+2)

2023年度はグループ全体では、生産量減、省エネ・CO2排出量削減策の実施により、原油換算のエネルギー消費量は10.8万kℓ(国内6.5万kℓ、海外4.3万kℓ)となり、2019年度比73%まで減少しました。CO2換算のGHG排出量においても同じ理由で23.1万トン(国内12.3万トン、海外10.8万トン)となり、2019年度比74%まで減少しています。

フロン類

当社国内事業所では機器の点検、フロン漏洩量の報告などが義務付けられているフロン類を使用した業務用のエアコンや冷蔵・冷凍機器を約800台所有しており、毎年、法に従い所定の点検を実施しています。2023年度のフロン漏洩量の合計は84kg(うち、オゾン層破壊能のあるフロンは0.35kg)、GHGとしてCO2換算すると241トンでした。

カーボンニュートラルに向けた施策

当社グループの事業所で排出されるGHGのほとんどがCO2であるため、Scope1+2ではエネルギーマネジメントシステムの構築・運用による効率利用、エネルギー転換(化石燃料→太陽光、水素)、Scope3では低GHG原材料(バイオマス原材料などカーボンニュートラルに寄与する原料)の使用、当社製品を使用する際の省エネ効果・GHG排出量削減・省資源効果、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO2回収・利用)にかかる技術開発に注力することでサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指します。また新中期経営計画において、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用したサプライチェーン全体での業務プロセス改革「ものづくり大改革」を行っており、その中で抜本的な生産プロセスの見直しや低GHG原材料の利用などカーボンニュートラルにつながる取り組みを推進しています。

≫ TCFD提言に基づく情報開示

バイオマスを利用した製品

生物由来原料(バイオマス)は、石油化学原料に比べ、再生可能で持続可能な原料であることから、石油化学原料からバイオマス原料への置き換えが進行しています。当社グループでも、米ぬか由来の日焼け止め製剤用原料、木材を使用した植物性レザーなどを開発しました。また、取り扱うポリエチレングリコール製品の一部でISCC PLUS認証を得ています。引き続きバイオマス原料を利用した高性能かつ環境負荷低減に貢献できる製品の開発を進めていきます。

≫ 環境対応製品

賛同するイニシアチブ

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イニシアチブ 主催団体
TCFD 気候関連財務情報開示タスクフォース
経団連チャレンジ・ゼロ 日本経済団体連合会
GXリーグ 経済産業省
2050京(きょう)からCO2ゼロ条例(京都市) 京都市

関連記事

≫ 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)へ賛同を表明 (2021年12月16日)
≫ 「2050京(きょう)からCO2ゼロ条例」へ賛同(2021年7月2日)

TCFD提言に基づく情報開示

2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同を表明しています。気候関連のリスクと機会については、関連する財務指標に与える影響度を評価し、経営戦略に反映のうえ持続可能な社会の実現に貢献するとともに企業価値の向上につなげていきます。
また、化学メーカーとしてCO2排出量削減に貢献する製品の開発だけでなく、自社事業所からの CO2排出量削減などを通したカーボンニュートラルへの貢献も企業としての責務です。これまで当社グループは政府が掲げる省エネ目標に基づいて、2017年度以降CO2排出量を着実に減少させてきました。今後、サステナビリティ行動計画において目標としている「2030年にCO2排出量削減50%(2013年度比)、2050年にネットゼロ」に向けサプライチェーン全体での排出量削減も目指しながら、グループ全体で積極的に取り組んでいきます。

ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティのガバナンスに組み込まれています。

戦略

当社グループは気候変動に関する戦略、リスク管理、指標と目標の策定にあたり、主要事業領域である生活・健康産業関連分野、石油・輸送機産業関連分野、プラスチック・繊維産業関連分野、情報・電気電子産業関連分野、環境・住設産業関連分野等を対象としてTCFD提言に沿ったシナリオ分析を実施し、事業リスクと機会の選定、重要性評価を行いました。また、2023年度は脱炭素社会への移行が実現する1.5℃シナリオに加え、全世界的に脱炭素が進展せず気候変動が進行した4℃シナリオについても定性的な分析を行い、結果についてサステナブル経営委員会にて審議・決定しました。

シナリオの考え方

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1.5℃シナリオ 「+1.5℃」に気温上昇を抑制していくためにCO2排出を強力に抑制するシナリオ
(国際エネルギー機関における長期的な見通し「Net Zero Emissions by 2050」)を参考としました。
4℃シナリオ 産業革命以前と比較し、21世紀末に世界の平均気温が4℃上昇する気候変動が進行した成り行きシナリオ
(気候変動に関する政府間パネル 第6次統合報告書(IPCC AR6)「SSP3-7.0」)を参考としました。

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1.5℃シナリオで
想定される世界
脱炭素社会の実現が最優先、野心的な気候変動政策を実施
  • 炭素税率の大幅アップ
  • 内燃機関エンジン(ICE)販売の禁止、電気自動車(EV)化、エネルギー・原料の脱炭素化
  • 再生可能エネルギーの主流化
  • リサイクルによる化学品節約
  • バイオマス、CO2原料からの化学品製造
  • 自然災害は徐々に甚大化
  • カーボンニュートラルの実現(2050年)
4℃シナリオで
想定される世界
経済活動優先で脱炭素移行は消極的、現時点での気候変動政策のみ実施
  • 化石エネルギー、原料の需要拡大
  • 異常気象による自然災害が激甚化
  • CO2排出量の大幅な増加

リスク管理

主要な「リスク」「機会」に対する当社グループの対応策および影響度評価を整理しました。影響度評価については影響する金額を推定し、その大小によって大、中、小と分類しています。リスクについてはシナリオを踏まえて、当社グループにおける気候変動リスクをさまざまな観点から検討しました。
脱炭素化に向けたカーボンプライシングなどの政策による規制が強まるとともに、脱炭素に適した素材への需要シフトをリスクとして想定しています。さらに、循環型経済への移行加速や脱炭素社会に向けた革新技術の登場も検討の対象としています。
特に事業所からのCO2排出量削減としては、当社グループの排出量の多くを占める名古屋工場、鹿島工場での対策として、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO2回収・利用)の活用や水素などへのエネルギー転換の検討を行っています。さらに個別製品のプロセス改善などを行い、CO2排出量の削減も合わせて検討しています。
機会については事業ポートフォリオの抜本的な見直しを含め、サステナブル経営を力強く推し進めることでCO2の排出削減に貢献します。

気候変動に関する主要な「リスク」と「機会」に対する三洋化成グループの対応策

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分類 シナリオ 気候変動
リスク項目
気候変動による
三洋化成グループへの影響
影響度評価 対応策
リスク 1.5℃ 炭素税の導入・
引き上げ
エネルギー調達コストの増加
  • コージェネレーション・太陽光発電導入によるGHG排出量削減
CO2排出量削減 GHG排出量が大きい当社品の需要減
  • エネルギーマネジメントによる製造時のGHG排出量削減
低炭素製品への置換 バイオマス原料を使用していない当社品の販売機会の縮小
  • バイオマス原料使用界面活性剤、PPGの販売拡大
リサイクル規制 リサイクル原料を使用していない当社品の需要減
  • リサイクル原料を使用した製品の開発
消費者行動の変化 ガソリン車、ハイブリッド車の販売減少
  • ガソリン車、ハイブリッド車の省燃費化に寄与する潤滑油添加剤の販売増加
4℃ 自然災害(台風・
豪雨・渇水等)
サプライチェーンの分断
自社拠点の被災
  • BCP体制の構築(雨水対策や建物・設備の防災対策、水利用の効率化、原料調達の複数化等)
機会 1.5℃ 炭素税の導入・
引き上げ
CCUSの普及
GHG削減に寄与する製品の需要増加
  • CCU関連製品の開発
  • 省エネルギー化に貢献する先端半導体関連製品の開発
CO2排出量削減 GHG排出量削減貢献製品の市場拡大
  • 風力発電用炭素繊維集束剤の販売拡大
低炭素製品への置換 バイオマス原料使用製品の市場拡大
  • バイオエタノール用工程薬剤の事業拡大
リサイクル規制 リサイクル対応製品の需要増加
  • リサイクル材料活用に関する製品開発
    (画像薬剤、ウレタン材料、樹脂分散剤等の分野)
消費者行動の変化 モビリティの低燃費化に伴う電池の軽量化促進
電気自動車の販売増加
  • 軽量化に貢献する有機正極二次電池用有機正極の開発
  • 自動車の電装化に伴う電解液の販売増加
  • 半導体需要増に伴うICトレイ用永久帯電防止剤の開発
4℃ 自然災害
(台風・豪雨・渇水等)
平均気温の上昇
断熱塗料の需要拡大に伴う塗料用バインダーの需要増加
  • 断熱塗料用バインダーの開発
環境変化に強い農作物等の市場拡大
  • 農産物の生産性向上に寄与するバイオスティミュラント機能を有する製品開発
水質悪化対策として、水質改良需要の高まり
  • 水質改良剤の開発
  • 影響度評価については影響する金額を推定し、その大きさによって大、中、小と分類

指標と目標

環境課題を解決するための取り組みは、「新中期経営計画2025」で、種々の指標や目標を設定しています。
1つは温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を削減する指標です。コージェネレーションや太陽光発電の導入に加え、CCUやグリーン水素導入を推進していきます。
もう1つはカーボンニュートラルに貢献する製品を拡大するための指標を設定していきます。

Scope1+Scope2:事業所からの排出

京都議定書が発効した2005年に「京都議定書に関する活動方針」を定めるとともに、国内各事業所と温暖化対策ワーキンググループを結成し、エネルギー使用の効率化、生産プロセス改善や燃料転換などに取り組んできました。
一方で2018年度から高付加価値製品の販売に重点を置く経営方針が打ち出され、低付加価値製品の販売をやめたことにより、特に国内の生産量は減少してきました。これにより国内生産品の生産量あたりのCO2排出原単位は減少に転じました。また、2023年度に高吸水性樹脂事業からの撤退を決断し、結果として事業ポートフォリオが大きく変わったことにより2024年度以降の自社事業所からのCO2排出量を大幅に削減できる見通しとなり、「2030年度CO2排出量50%削減(2013年度比)」を前倒しで達成できる見込みです。当社グループは引き続き、「2050年ネットゼロ」実現に向けて取り組みを推進していきます。

CO2 排出量の実績値と目標値(Scope1+Scope2)

CO2排出量削減の実績値と目標値(Scope1+Scope2)

カーボンニュートラルに向けたロードマップ

GHG排出量削減策としてエネルギー転換(エネルギーマネジメント導入、太陽光発電・グリーン水素導入、コージェネレーション拡大)、製造プロセスの見直しを進めます。さらにCCU導入により「2050年ネットゼロ」実現を目指します。

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カーボンニュートラルに向けたロードマップ

Scope3:サプライチェーンを通じた排出

燃料使用などによる直接排出(Scope1)、他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出(Scope2)に加え、サプライチェーンを通じた排出(Scope3)を算定しています。
2023年度は、当社事業所からの排出量(Scope1+Scope2)23.1万トンに対し、Scope3では191.1万トン。購入原材料にかかるCO2および当社製品を使用した最終製品の廃棄にかかるCO2が、それぞれScope3全体の53%、39%を占めます。

当社グループにおけるサプライチェーンでの温室効果ガス排出

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当社グループにおけるサプライチェーンでの温室効果ガス排出

当社製品の販売先での使用・加工・輸送にかかるCO2は、算定に必要なデータ収集が困難であり算定していません。
また、2022年度より、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンが策定した標準アンケートツール(共通SAQ)を活用し、サプライチェーンを通じたCO2排出量削減に取り組んでいます。

今後に向けて

当社グループは社是に基づいた事業活動を通じて、自社のカーボンニュートラルにとどまらず、持続可能な社会の実現に向け貢献します。