三洋化成グループは、一人ひとりの人権を理解し、個性や価値観を認める土台があってこそ、多様な人財の活躍につながると考えています。また、世界のさまざまな地域で事業活動を進めていくためには、事業活動にかかわるステークホルダーやサプライチェーン全体における労働に関する権利も含めた人権課題への取り組みが求められています。こうした考えのもと、2023年3月に当社グループ「人権方針」を策定しました。今後は、社内外における人権リスク低減のために積極的に情報開示し、人権デュー・ディリジェンスや救済の仕組み構築などの取り組みを進めます。
人権方針
三洋化成グループの人権方針
1. 基本的心構え
企業活動がグローバル化する中、企業に対しても包摂的な社会づくりの視点から人権侵害をなくすための取り組みが求められています。三洋化成グループは、全ての人々の人権を尊重する経営を行い、自らの事業活動が人権に負の影響を与える可能性を認識するとともに、顧客、ビジネスパートナー、サプライヤーおよび行政等とも協力し、そうした負の影響の回避に取り組むことで投資家や顧客等、幅広く社会の評価を得ることにつなげていきます。また、多様なステークホルダーと連携し、社会的弱者の支援に協力します。
2. 適用範囲
本方針は、三洋化成グループのすべての役員および従業員に適用されます。また、三洋化成グループは、顧客、ビジネスパートナーおよびサプライヤーに対して、本方針への支持と、同様の取り組みへの参画を期待して継続的に働きかけ、協働して人権尊重の取り組みを推進します。
3. 人権尊重の責任
三洋化成グループは、自らの事業活動において影響を受ける人々の人権を侵害しないこと、また自らの事業活動において人権への負の影響が生じた場合は是正に向けて適切に対処することにより、人権尊重の責任を果たします。顧客、ビジネスパートナーやサプライヤーにおいて人権への負の影響が引き起こされている場合には、適切な対応をとるよう求めます。
4. 適用法令の遵守
三洋化成グループは、以下の文書により定められたものを含め、国際的に認められた人権に関する規範や各国の法令の理解に努めます。各地域の国内法令が国際的に認められた人権に関する規範と両立しない場合には、後者を尊重する方法を追求します。
- 国際人権章典 世界人権宣言と国際人権規約(自由権・社会権)
- ILO(国際労働機関)中核的労働基準(児童労働、強制労働、結社権と団体交渉、雇用差別関係等)
- 国際連合「ビジネスと人権に関する指導原則」
- OECD多国籍企業行動指針
- 国連グローバル・コンパクト(人権・労働・環境・腐敗防止に関する10原則の企業の自発的取組)
- ISO26000「社会的責任に関する手引き」
- 日本政府「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
- 英国現代奴隷法
5. 人権デュー・ディリジェンス
三洋化成グループは、人権への負の影響を特定する人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、予防的に調査・把握を行い、適切な手段を通じて是正し、自社が社会に与えうる人権への負の影響を防止または軽減することに継続的に取り組みます。
6. 人権リスクの特定
三洋化成グループは以下の3点を顕著な課題として特定し、これらの人権課題について、取り組みを進めていきます。
- サプライチェーン上の労働
- 従業員の安全と健康
- 地政学的情勢や紛争の影響による人権リスク
7. 予防策と軽減策
三洋化成グループは、思想、信条、年齢、社会的身分、国籍、出身、民族、宗教、移民、性別、性的指向、性自認、妊娠、貧困、疫病及び障害の有無等の理由による差別や個人の尊厳を傷つける行為は行いません。また、それらの理由による差別や個人の尊厳を傷つける行為に苦しむ社会的弱者が抱える課題の把握に努め、行政や自治体、社会福祉団体等の多様なステークホルダーと連携し、その支援に協力します。
8. 是正・救済措置
人権侵害が経営上のリスクとなることを十分に認識し、人権侵害を予防し、万一人権侵害があった場合は、これに公正・適切に対応し、児童労働や強制労働には反対するだけでなく、それらによって製造されたと思われる原材料等は使用しません。また、匿名で通報可能な社内従事者用の通報窓口を設置し、通報者や通報内容の秘密を適切に取り扱い、必要な処置を講じます。通報者に対する不利益な取り扱いや報復を禁止し、通報者の保護を徹底します。
9. 教育
三洋化成グループは、本方針に関する正しい理解が社内外に浸透し、効果的に実行されるよう、適切な教育を継続的に行います。
10. 情報開示・エンゲージメント
三洋化成グループは、人権尊重に関する取り組み状況について開示します。また、社内外の様々なステークホルダーとの対話や協議を通じて、本方針に基づく一連の取り組みを進化させていきます。
制定日:2023年3月
「サプライチェーン上の労働」に関わる人権課題への取り組み
サプライチェーン上で想定される人権問題
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原料調達
サプライヤー・取引先等
・強制労働、児童労働
・紛争鉱物
・先住民/移民の権利侵害
・環境破壊による地域コミュニティの被害
・サプライヤー・取引先における人権侵害 -
開発・製造、輸送
従業員、委託先、外国人技能実習生等
・不当な労働環境、労働条件
・労働災害、健康被害
・差別、ハラスメント
・プライバシーの侵害 -
使用、最終消費廃棄、リサイクル
顧客、消費者等
・マーケティング表現による差別の助長
・監視等の人権侵害目的での製品の使用
サプライチェーンにおける人権配慮
2021年3月に国連グローバル・コンパクトへ署名したことを契機に、これまで掲げていた「購買方針」を見直し、2022年1月に「サステナブル購買方針」として改定しました。また、お取引先と協働してサステナブルな社会を目指すための「サステナブル調達ガイドライン」(日本語・英語で対応)に、サプライチェーンにおける人権配慮を明記し、同時期に改定しました。購買方針と本ガイドラインをWebサイトに掲載するとともに、お取引先へのCSRアンケート依頼時に添付し周知を図っています。事業活動を通じて直接的、間接的にかかわらず人権侵害への加担や助長につながることに関わらないように活動していきます。2022年度からは、国連グローバル・コンパクト「CSR調達セルフ・アセスメント・ツール」に基づく主要原料のサプライヤーアンケートを実施し、重大な人権問題の把握に努めています。
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アンケートの対象 | 回答数 | ||
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2022年度 | 主要原料のサプライヤー | 14社 | 14社 |
2023年度 | 界面活性剤製品の主原料である油脂原料のサプライヤーと代理店 | 67社 | 51社 |
2023年度に実施した油脂原料のサプライヤーと代理店へのアンケート結果から、4社に人権問題の取り組みに対する課題がありました。改めて本ガイドラインの説明を行うなど、サプライチェーン全体での人権尊重の理解促進と実践を進め、1年後にフォローアップを実施し、人権問題リスクの低減を図ります。2024年度は、無機原料のサプライヤーを対象に調査を実施します。
≫ サプライチェーンマネジメント
「従業員の安全と健康」に関わる人権課題への取り組み
当社グループでは、ハラスメント防止のための啓発やセミナーなどのさまざまな取り組みを行っています。継続的にハラスメントに関する知識や対応能力を向上させ、「ハラスメントをしない、許さない、傍観者にならない」ことを強く決意し実行するとともに、「コミュニケーション豊かな風通しのよい職場」「ハラスメントのない、安全で働きやすい職場」づくりにつとめていきます。
内部通報窓口とは別に、特にセクハラ・マタハラ・LGBTQに関する案件については、より相談がしやすいように社内外に相談窓口を設けています。
通報者に不利益が生じないよう、細心の注意を払って事実関係を調査し、問題が確認された場合には、対象者への指導、是正に向けた教育などを実施しました。また、イントラネットを活用して、全従業員への注意喚起を行いました。
「ハラスメントの撲滅」のためには、グループディスカッションを含む「企業倫理勉強会」を当社グループ全体で実施するという形で、2023年度を通じて極めて熱心な取り組みを展開しました。またハラスメントに関する内部通報や相談の窓口を社内・社外で拡充することなども行いました。このような勉強会の実施などによる役員・従業員への意識啓発と、通報・相談がしやすい環境を整備することで、すべての従業員が安心して働ける会社を実現したいと考えています。
ハラスメント通報/相談窓口(社内・社外)
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名称・内容 | 分類 | 担当 | |
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コンプライアンスホットライン | 通報 | 社内 | 監査室長 |
社外 | 顧問弁護士 | ||
セクハラ・マタハラ・LGBT(ハラスメント)社内相談窓口 | 相談 | 社内 | 人事部 |
ハラスメント相談窓口 LGBT相談窓口 |
通報 | 社外 | 外部専門業者 |
「地政学的情勢や紛争の影響による人権リスク」に関わる人権課題への取り組み
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、未だに終息の見通しが立たず、今も多くのウクライナの人々が国外に避難する状況が続いています。当社グループでは、京都在住のウクライナの人々への生活支援を目的に、「ウクライナ・キーウ(キエフ)京都市民ぐるみ受入支援ネットワーク」に賛同して寄付しました。京都市と対話を重ね、同年9月からウクライナ人留学生(2人)を受け入れています。
人権教育・啓発
当社グループは「人権方針」に関する正しい理解が社内外に浸透し、効果的に実行されるよう、適切な教育を継続的に行うことを、本方針の中で明示しています。
2023年度実績
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項目 | 教育・研修名 | 対象者 | 講師 | 参加人数 (人) |
延べ時間※ (時間) |
---|---|---|---|---|---|
人権/コンプライアンス | ハラスメント防止研修 | 役員・管理職 (受講必須) 新入社員 |
社外有識者 | 414 | 828 |
企業倫理勉強会 (オンライン研修講座・グループディスカッション) |
役員・従業員 | 社外有職者・コンプライアンス委員会事務局 | 1,528 | 3,056 | |
DEI推進 | 4社協同企画講演会「世代間ギャップから考えるエイジダイバーシティ」 | 役員・従業員 | 社外有識者 | 165 | 330 |
DEI研修 | 新入社員 | 社外有識者 | 35 | 87.5 | |
女性活躍 | 社外公募制研修「女性のためのエンパワーメント21世紀塾」 | 従業員(女性・主にリーダー職) | 社外有識者 | 2 | 79 |
社内公募制研修「女性ネットワークセミナー」 | 従業員(女性) | 社外有識者 | 9 | 180 | |
女性社外取締役サロン | 従業員 | 当社社外取締役 | 57 | 85.5 | |
育休復職者向け「仕事と育児」両立支援セミナー | 子が誕生した従業員と上司、社内外パートナー(任意) | 社外有識者 | 127 | 175 | |
阪大スタイル産学共創教育事業 育成プログラム | 従業員(女性・プログラム内容に適する者) | 社外有識者 | 5 | 114 | |
LGBTQ | LGBTQ当事者によるサロン | 従業員 | 社内担当者 | 74 | 74 |
オンラインミニ講座 SOGI(性的指向、性自認) | 役員・従業員 | 社内担当者 | 427 | 170.8 | |
障がい者雇用 | 障がい者雇用理解推進研修(受け入れ部署向け) | 従業員 | 社外有識者 | 59 | 29.5 |
オンラインミニ講座 障がい者雇用 | 役員・従業員 | 社内担当者 | 893 | 357.2 |
- 参加人数×受講時間
労使関係
基本的な考え方
三洋化成工業株式会社と三洋化成工業労働組合(以下労使)は次の労使基本理念を確認し、その実現を目指して労働協約を締結しています。
労使基本理念
労使はそれぞれの立場を尊重し、互いに協力して雇用の維持、労働条件の維持改善および企業の健全なる発展を目指す。
労使は対等の理念に徹し、自主性をもって発展的に課題に取り組む。
労使は相互信頼と相互理解を基盤とし、話し合いをもって問題解決にあたる。
労働協約においては、労働者が労働基本権(団体交渉権など)を保有することを保障しています。
雇用・労使関係
当社はユニオンショップ制を採っており、国内では関係会社を含め、管理職・試用者・嘱託および臨時雇用者を除いた全従業員が三洋化成工業労働組合に所属しています。海外関係会社に関しても、当社からの出向者は上記と同様の扱いです(海外現地採用者を除く)。組織率は69.9%(2024年4月1日時点)です。
労使間の対話
当社と労働組合は、相互の立場を尊重し、信頼に基づいて良好な労使関係を築くため、当社経営陣と労働組合幹部による労使経営懇談会を月1回(うち年2回は社長を含めた当社経営陣が参加する拡大労使経営懇談会)開催し、経営状況や従業員からの意見・要望を共有しています。また、事業所ごとの労使経営懇談会や、機能・部門別の労使経営懇談会も定期的に実施しています。
当社では過去から労使双方の強い想いにより、 春闘にだけ多大な時間を費やすのではなく、独自の賃金改定方式を導入することで、福利厚生などを含む広く人事制度全般の充実に多くの時間を使うべく、労使の各部門・機能の代表者で構成される労使専門委員会を設置して議論しています。労使専門委員会の議題は、毎年8月に実施される人事処遇制度労使運営委員会での議論を経て労使それぞれに答申されます。会社側は経営会議で審議し、労働組合側は中央執行委員会で審議した上で中央大会もしくは中央委員会を経て組合員が審議します。
安全衛生や作業環境改善の要望については、事業所ごとに月1回開催される安全衛生委員会または衛生委員会で改善措置を行っています。
主な協議内容(2023年度)
・総合住宅制度見直し
・賃金改定方式見直し、賞与算定式締結、ベースアップ実施