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発酵時に出る泡を効果的に除去 バイオ燃料の普及で環境に貢献する技術

三洋化成ニュース No.532

発酵時に出る泡を効果的に除去 バイオ燃料の普及で環境に貢献する技術

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2022.05.23

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私たちの身の回りには生活に役立つさまざまな泡がありますが、製品の製造工程においては泡の発生が難点となってしまうケースもあります。
今回は、ガソリンの代替燃料となるバイオエタノールの発酵工程で効果的に泡を消し、生産性を向上させる技術を紹介します。

泡は液体の泡膜に囲まれた気体の総称

洗剤や炭酸飲料など、生活のさまざまな場所で利用されている泡。私たちが泡と呼んでいるものは、液体の膜に囲まれた気体の総称です。膜を形成する液体や内部の気体の種類はさまざまですが、基本的には同じ構造をしています。

泡は時間が経てば自然に破裂しますが、これは泡膜を形成する液体が重力によって下の方に流れ、泡膜が薄くなることが原因です。ただの水は泡立てても瞬時に泡は消えますが、豆乳やビールなどは配糖体やタンパク質といった界面活性の高い物質が含まれており、それらが泡の表面に並ぶことで泡膜が安定化し、破裂しにくくなることから、泡立ちます。そのため、例えばシャンプーなど泡を長持ちさせたい場合は、界面活性剤などを添加して、泡膜を安定化させる技術が使われています。

 

泡膜に入り込み、拡張することで泡を消す消泡剤

生活に役立つ面も多い泡ですが、製造現場などでは、泡の発生が製品の品質に悪影響を及ぼしたり、製造時の効率を低下させたりすることがあります。

例えば、プラスチック製品や塗料などは、泡が残ってしまうと外観不良や、品質低下につながります。また塗料や紙パルプ、樹脂ゴムなど、製造時に強力なかくはんを伴うものは、泡を消すことができなければ、大量の泡が溢れ出てしまい、操業を停止しなければならない事態も起こり得ます。

こうした泡の発生を抑えるために使用されるのが消泡剤です。大きく分けて鉱物油系、ポリエーテル系、シリコーン系の3種類があり、主な成分は油で構成されています。油のついた手をせっけんで洗っても、なかなか泡が立たないことからも、油には泡を消す力があることがわかります。

泡の表面は、界面活性物質が水になじみにくい疎水基を表面に出して規則正しく並んでいます。消泡剤は、水になじみやすい親水性の部分と水になじみにくい疎水性の部分が混在しているので、疎水基が並ぶ泡の表面に入り込むことができます。泡膜は一定の厚さを保つことで弾力を持ち割れにくくなっていますが、消泡剤が泡膜に入り込み拡張することで、薄くなって破裂します。

これが、消泡剤が泡を消すメカニズムですが、実際に使用する量はほんの少量です。そのため効果的に泡を消すには、少しの量でも材料全体に広がる拡散性も求められます。もちろん、最終製品の機能を損なわない成分であることも重要な要素です。消泡剤はこうしたさまざまな要素を加味してつくられています。

 

 

ガソリンの代替燃料、バイオエタノールの製造に欠かせない消泡剤

サンノプコは1966年の創業からこの消泡剤を手がけてきた会社です。消泡剤は幅広い分野で使用されますが、実は塗料用途だけをとっても、使用する原料や製造・使用条件、製品に求められる品質など、メーカー・製品ごとに違いがあり、最適に泡を消すためにはそれぞれの材料や環境に合わせた消泡剤が必要になります。サンノプコは、こうした細かなニーズに対応できる技術力を持っており、お客様に合わせてカスタマイズできる強みを武器に、国内の塗料や紙パルプの分野では、長年、高いシェアを誇っています。

かねてからこの技術力を環境分野に活かしたいと考えていた同社では、ガソリンの代替燃料として注目されていたバイオエタノール発酵用の消泡剤に着目。この開発に成功し、バイオ燃料先進国のブラジルで、バイオエタノール製造用の消泡剤を供給しています。

ただ成功までには、かなりの苦労がありました。ブラジルのバイオエタノールはサトウキビが原料のため、発酵の際に二酸化炭素が発生して大量の泡になります。工業製品として大量に製造するには、当然、この泡を消さなければなりませんが、サトウキビは糖質を含んでいるため、発生する泡膜の粘性が高くなり、泡が安定化して消えにくいという特性があります。サンノプコではこの課題をクリアするため、何度も現地に赴いてテストを実施。不純物や発酵温度など、生産者ごとに異なる製造条件に合うようトライ&エラーを繰り返しながら、数年がかりで最適な消泡剤を完成させました。

現在ブラジルの自動車用燃料は、純粋なガソリンはなく、純エタノールもしくはエタノール含有のガソリンのみになっていますが、この普及にはサンノプコの消泡剤が大きく貢献していると言えます。

 

バイオエタノール製造の発酵槽

 

 

SDGsはもちろん、世界の環境に大いに貢献する技術

現在サンノプコでは、発酵工業用途の消泡剤に関しても、お客様の材料や設備の変化に合わせて対応できるよう、常に新たな開発を続けています。またブラジル以外でのニーズを探るべく、バイオ燃料の普及が見込まれる地域での調査なども進めています。

一方で消泡剤全体としては、同社が持つ植物油から消泡剤をつくる技術を活かし、より環境に配慮した製品を世界中に広める活動にも取り組んでいます。

サンノプコの消泡剤は、SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標13「気候変動に具体的な対策を」にとどまらず、環境面では広く世の中に貢献する技術です。今後もカーボンニュートラルを後押しする技術で、世界の環境保全に貢献していきます。

 

 

当社製品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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