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三洋化成ニュース No.534
2023.01.09
怒りにまつわる悩みはいろいろとありますが「怒れないこと」を大きな悩みにしている人はかなりいます。
アンガーマネジメントを学びに来る人は「自分の怒りをどうにかしたい」「身近にいる人の怒りにどう向き合えばよいのかわからない」といった、どちらかというと怒りをあらわにすることへの対処方法を探している人が多いイメージがあるのではないでしょうか。ところが実際には「怒るべきタイミングで怒れない」「怒り方がわからないので学びたい」という理由で学びに来る人もたくさんいます。
そこで今回と次回に分けて「怒れない人」がどうすれば上手に怒れるようになるのかを紹介します。
今回は「怒れない人」がなぜ怒れないのかの3大理由について解説をし、次回は怒ることに自信が持てるようになる習慣を紹介します。
それでは早速、怒れない3大理由を解説していきます。あなたが「怒ることが苦手」「上手に怒れない」と思っていたら思い当たる節があるかもしれません。
怒れない人になってしまう最大の理由です。これに尽きると言っても過言ではないくらいです。誰でも悪い人と思われるよりは良い人と思われたいものです。怒れない人は、自分を犠牲にしてでも誰かの機嫌を取ることを優先させてしまいます。その結果、誰かの機嫌を取ることはできても、自分の機嫌は取れず不機嫌なままです。そしてその不機嫌さは身近な人に伝わり、良い人でいたいと思っている割に身近な人とは小競り合いを繰り返してしまいます。
わざわざ誰かに迷惑をかけようと思う必要はありませんが、誰にとっても良い人でいることは無理な話です。どんなに気を付けていても迷惑をかけることはありますし、人から嫌われることだってあります。
そもそもあなたが考える良い人は、他の誰にとっても良い人かどうかはわかりません。例えば誰に対しても優しい人がいたとします。その人を良い人と言う人もいれば、八方美人で信用ならないと言う人もいるかもしれません。
万人にとって良い人はいません。誰にとっても良い人でいようとすることは、幻の動物でいようとするようなものなのです。
私たちは子どもの頃から「怒ってはダメ」「怒るなんてみっともない」と教わりました。子どもの頃に怒ることで褒められた経験のある人はほとんどいないでしょう。
本連載を読んでいる方であればご存じの通り、怒りは人に備わっている自然な感情で、大切なものを守るために必要なものです。ところがなぜか、子どもの頃から怒ることは良くないこと、恥ずかしいことだとしつけられてしまいます。ほとんどの大人が怒りで失敗した経験があるので、そう教えたくなる気持ちもわかるのですが。
一方で、素直でいることは良いこととされています。であれば、自分の気持ちを素直に表現することは褒められこそすれ、叱られるようなことはないはずです。
素直でいることが求められるのは、素直な人は人に好かれると思われているからです。自分の気持ちを素直に適切に表現できれば、それは素直な人として受け入れられます。
怒ることは恥ずかしいことではありません。自分の気持ちを隠たり、偽ったりすることのほうが不誠実で恥ずかしいことなのではないでしょうか。
怒れる人からすれば「怒りたいなら言いたいことをそのまま言えばいいじゃないか」と思えるかもしれませんが、それができたら苦労しないというのが怒れない人の言い分です。
怒り方がわからない人に共通していることは「これまでに上手に怒られた経験がない」「上手に怒る人を身近で見たことがない」そして何よりも「自分が怒られて嫌な気持ちにしかなったことがない」ことです。
世の中で上手に怒れる人は圧倒的に少数派です。多くの人は怒ることが上手ではありません。私自身、子どもの頃を振り返ってもこの人にだったら怒られてもいいなと思える人は残念ながらいませんでした。
ただ少数派ながらも、怒るのが上手な人は実際にいます。とはいえ、なかなかそんな人に出会うのも難しいかもしれません。
そういう場合はドラマ、小説、漫画の主人公などの架空のキャラクターでいいので、上手に怒る人を見つけ、その人が怒ることで周りにどう良い影響を与えることができるのかを考えてみましょう。それだけでも、怒ることへの苦手意識を小さくすることができます。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。日本におけるアンガーマネジメントの第一人者。アメリカのナショナルアンガーマネジメント協会では15人しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アジア人としてただ一人選ばれている。『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)ほか著書多数。