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三洋化成ニュース No.511
2018.11.01
京都市街地の地図を広げると、ほぼ真ん中に京都御所があります。本コラムで、京都の穴場を期待されていた皆さんは「今さら御所?」と感じるかもしれません。49年前に同志社大学に留学したのが私の京都人としてのスタートでしたが、その当時の私でも「御所」は知っていました。
ではなぜ御所か? 私は、京都は歩く街だと思っています。なかでも最近ゆっくりと歩いた「御所」には驚くことがいっぱいありました。そこで今回、知っているようで知らない穴場としてご紹介します。
早速「御所」に入ってみましょう。その前に「御所」と呼ぶのは間違いでした。正式名称は「京都御苑」。その京都御苑の中に「京都御所」「大宮御所」「仙洞御所」があり、それを除く約65ヘクタールが国民公園として24時間365日開放されています。
それでは、「蛤御門」から入ってみましょう。なぜか? 私のオススメだからです。「禁門の変(蛤御門の変)」は、学校で習いましたね。「蛤御門」には長州藩や会津藩が打ち込んだ鉄砲の弾の跡がくっきりと残っています。たくさんの人が歴史を感じようと、その弾傷の跡を触っていることから変色しています。しかし、京都国際観光大使の私が知らなかったことが一つ。「蛤御門」の由来です。その答えは門から入ってすぐの色あせた木の看板にありました。もともと別の名前があったこの門。江戸時代の大火でそれまで閉ざされていた門が初めて開いたことで「焼けて口開く蛤」に例え、蛤御門と呼ばれるようになったそうです。
京都御苑を目いっぱい歩きたい人にはこんな仕掛けもあります。蛤御門の説明看板の下にスタンプラリーのような台があります。これは「浮出絵付駒札」と言われるもので、京都御苑内の20カ所に設置されています。台には鉄でできた凹凸のプレートがあるのですが、そこにA4の白い紙を乗せ鉛筆でこすると一枚の絵が完成する仕掛けになっています。絵は18枚で完成。つまり2カ所はハズレということでしょうか。京都人はいけずですね。どんな絵ができるでしょう? 教えません。私もすっかり京都人。ぜひチャレンジしてみて下さい。
東を向くと、左手に見える壁は京都御所の壁。右手の少し奥には大宮御所の壁が見えます。その借景になっているのが美しい大文字山です。
そこから南の方へ足を運びましょう。大きな椋や、出水の小川など自然を感じながら歩き続けると、丸太町通の一歩手前で、拾翠亭という数寄屋風書院造の建物にたどり着きます。
ここは江戸時代の九條家のお屋敷で、当時は茶会のための離れとして使われていたそうです。この景色が京都市のど真ん中で、なんと入場料100円で見ることができるのです! 知らなかった人も多いのではないでしょうか(実は私も49年間知りませんでした)。
中に入りましょう。とても静かで、江戸時代後期の空気がまだ漂っています。公家たちが茶会を楽しんだ地に、現代の私たちも入れるなんて、すごい! 日本人は時間の経過を感じさせるものに美しさやわびさびを感じます。拾翠亭の色あせた木、柱のちょっとした傷、古い書院造には独特な味があります。見事に美しい東山を借景にした静かな池が「生きている」ありがたみを感じさせてくれます。ここまで来ると気付くことでしょう、「足が疲れている」。そこでお勧めするのが蛤御門から出てすぐのところにある「護王神社」。ここは「足腰の守護神」が祭られています。ぜひ帰りには、足のお守りを手にして、次の京散歩に備えてください。