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三洋化成ニュース No.514
2019.05.07
私たちの暮らしに必要不可欠なものとなっている、液晶テレビやスマートフォン。この画面に使用される透明な板がフラットパネルディスプレイ(F P D)です。F P D は、ガラスのほかに複数の機能フィルムを接着剤で貼り合わせて作られますが、その接着剤の硬化方法には、熱を使って固める熱硬化と紫外線を使って固める光硬化の2種類があります。
なかでも光硬化は、硬化スピードをコントロールでき、材料が熱によるダメージを受けないことから、熱の影響を嫌う電子材料などの分野には最適な手法です。また熱硬化は、乾燥させる際(硬化時)に有機溶剤などが空気中に拡散することがありますが、光硬化は空気中に何も発散しないため、環境性にも優れています。そのため光硬化樹脂は近年、FPDの分野で広くその需要を伸ばしています。
光で固める光硬化の手法には、光ラジカル重合と光カチオン重合の2種類があります。基本的には、光ラジカル重合はアクリル樹脂、光カチオン重合はエポキシ樹脂の硬化に用いられます。
光ラジカル重合は硬化速度が速く比較的低コストですが、硬化後に10%程度収縮してしまうというデメリットがあります。それに比べ光カチオン重合は、硬化後の収縮率が1〜2%と少ないのが特徴。この収縮幅は製造するものが大きくなるほど顕著に表れ、製品にひずみなどの影響を及ぼすため、高い寸法精度が必要な製品ほど光カチオン重合が選ばれます。
また光カチオン重合に使用するエポキシ樹脂は、硬さの調整が可能なだけでなく、曲げた時に割れにくい粘り強さ(靱性)もあり、さらに電気絶縁性にも優れているという多くの特徴があります。こうした特徴が評価され、光カチオン重合は、数年前からFPDに使用される偏光板のフィルムの接着剤として取り入れられるようになりました。
光カチオン重合にとって欠かせないのが酸の存在。この酸を、光を使って発生させるのがサンアプロの光酸発生剤です。
光カチオン重合を促すには、まず光酸発生剤をエポキシ樹脂に混ぜ合わせます。この時点では、液体(モノマーやオリゴマー)のままです。光酸発生剤は紫外線を照射されると、分解して酸を発生します。発生した酸は一部のエポキシに働きかけ、エポキシ同士が重合を開始。次第に固体(ポリマー)に変わっていくという仕組みです。エポキシ樹脂が固まる時間や硬さは、発生する酸の量や強さによって決まるため、これらをコントロールする技術が光酸発生剤の性能を左右します。サンアプロは、この光カチオン重合に必要不可欠な光酸発生剤を製造しており、酸をコントロールするための数々の技術を保有。ディスプレイの普及、大型化に伴い、市場を拡大しています。
サンアプロの製品は、酸の量や強さを調整できるうえに、幅広い波長で酸を発生させることも可能です。成分を変えることで、ピンポイントでの硬化や、光が届きにくい部分の硬化など、さまざまな用途に対応できる強みを持っています。現在、製品ラインアップとしては対応波長や発生する酸の量や強さ、溶解性などの異なるCPI-100〜400シリーズを上市。FPD製造顧客のニーズに合わせ、最適な光酸発生剤を提供しています。
ディスプレイの進化に伴い、光カチオン重合の市場はさらに広がっており、最近では話題の有機E Lを使った薄型で曲がるディスプレイなどにも活用されています。現在は、有機E Lの次の素材への対応をはじめ、医薬品や再生医療、バイオなど医療分野への研究も進行中。未来に向け、さらなる用途の拡大が期待されています。