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上を向いて歩こう

三洋化成ニュース No.517

上を向いて歩こう

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2019.11.05

ジェフ・バーグランド

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子どもの頃に父親が運転していた車は1953年型ビュイックロードマスターの白いオープンカーでした。日曜日はよくドライブに行きました。生まれ育ったサウスダコタ州は雨がほとんど降りません。だから、いつも屋根を開放して走りました。雲一つない青い空を見上げながら後部座席に横になり、空を見上げるのが日課でした。坂本九さんの歌う「SukiyakiSong」がアメリカのヒットチャート1位となり、毎日カーラジオから流れていたのがちょうどその頃です。

 

いま私は、住まいのある京都市内から車で1時間ほど走った京都市の北部、美山町にある「かやぶきの里」を歩いています。「かやぶきの里」とは、今でも数多くのかやぶき民家が残っていて、歴史的景観の保存度への評価も高いことから国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された、一年を通じて日本の原風景に出会える場所として、人気の観光スポットにもなっている場所です。

 

まさに私が見上げているこの青い空が、アメリカで見た懐かしい記憶を思い出させてくれました。今日は上を向いて歩きましょう。

 

早速、由良川沿いに立つと、見渡す限り美しい山が見えます。まさしく「美山」です。そこから集落の中を歩いていくと、美しいかやぶき屋根がたくさん見えます。この日は、台湾や香港からたくさんの外国人観光客が来ていました。私も含めて、外国人の日本に対するイメージはかやぶき屋根の民家、そして緑いっぱいの田んぼや美しい山々、まさにこの景色こそ日本の原風景のイメージなんです。集落の真ん中には築200年以上のかやぶき屋根の家がカフェになっていて、みんなのんびりとその時を楽しんでいます。目線を上に向けるとカフェの屋根は低いところまで伸びていて、私も観光客も手で触れて、目で厚みを確認することができます。美山のかやぶき屋根はほとんどススキで作られているのですが、その屋根のすごさに圧倒されました。

 

 

お昼はせっかくですから全国でも有名な美山川の天然鮎を食べたいと思い、料理旅館枕川楼に行きました。かやぶきの里から歩いて30分くらいでしょうか? 定番の塩焼きも天ぷらもおいしいのですが、生まれて初めて「鮎の背ごし」というお料理をいただきました。

 

コリコリとした食感があって、スイカのような甘い香りがします。鮎のことを英語で「sweetfish」というのですが、今日その理由が初めてわかりました。「もう、今日はこの旅館に泊まろうかな?」。私のもう一つのおススメは食後のデザート。インバウンドの人たちもみんな食べていた、道の駅で販売されている美山牛乳で作ったソフトクリームやジェラートは、歩き疲れた後には最高です。

 

美山では本当にたくさんの外国人観光客に出会いました。誰もが美山に大満足している感じでした。美しい山、美しい川、美しい田んぼや畑、美しいかやぶき屋根の民家、美山牛乳で作るおいしいソフトクリーム、全てが最高だと!

 

サウスダコタ州はほとんど草原地帯です。青々しい緑は全く見当たりません。遠くに見える山もブラックヒルズと呼ばれる黒い山。だからみずみずしい緑の原風景を見ると本当に心が落ち着くのです。

 

上を向いて美山を歩くと、美しいもの、おいしいものにたくさん出会えました。坂本九さんが「一人ぼっち」で見上げた夜空にはまだ時間がありそうです。私も美しい美山の星空に出会うまでもうしばらく「一人ぼっち」で夜を待ちたいと思います。

 

〈ジェフ・バーグランド〉

京都外国語大学国際貢献学部グローバル観光学科教授。専門は異文化コミュニケーション。アメリカ・サウスダコタ州生まれ。江戸時代後期に建てられた京町家に暮らし、執筆・講演・メディア出演多数。2014年京都国際観光大使に就任。KBS京都の『JEFF@KYOTO おもてなし京都観光』は、YouTubeでも配信されている。

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