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三洋化成ニュース No.518
2020.01.15
私の大好きな場所、京都市北部の丹後地方にある伊根町に来ています。「舟屋」で有名な町ですのでご存じの方も多いと思います。舟屋とは、漁船のガレージのようなもので、山側には漁師たちの住む「母屋」があり、狭い道を挟んで海側に「舟屋」があります。元々草葺きでシンプルな船を停めるだけだったものが、明治から建て替わって、昭和から現在の二階建て舟屋が主流になったそうです。しかし、舟屋の歴史はさらに古く、一部ではありますが江戸時代から使われていた舟屋の跡もあり、おそらく世界的に見ても最も古いboathouse が見られる場所になるのではないかと思います。事前に予約をすれば見学させてもらえるところもありますからぜひ、伊根独自の文化に触れていただきたいと思います。
伊根町に「ガンジャが鼻の赤灯台」という場所があります。これは漁船が航行する伊根湾の入り口に立っていて、町の中心部にある観光案内所からもおよそ2.5キロメートルほどなので私が伊根を訪れる時はいつもここを歩きます。この道のおすすめは、海と山の狭い道に挟まれるように舟屋が立ち並んでいるところ。「これぞ伊根」という光景を存分に楽しむことができます。またその道中、地元の人としゃべったり、気になる舟屋をちょっとのぞいてみたり、古い町並みや建物を眺めながらゆっくりとのんびりと歩くことで気分がリセットされていくのを楽しみます。
もう一つの私の伊根の楽しみ方が、海から眺める舟屋の町並み。ぜひ湾を一周する遊覧船に乗ってみてください。海から見た伊根町もとても美しく、青い空、青い海、緑深い山、そして約230軒から成る舟屋の姿が見られて爽快な気分になります。おまけに遊覧船にカモメがついて飛んできますので、手渡しで次々とエサをあげる非日常的な体験もできます。
今回、幸運なことに舟屋にある露天風呂に浸かりながら、美しい伊根湾を眺める機会に恵まれました。思わず口から出たのが…
Oh, what a beautiful morning
Oh, what a beautiful day
I’ve got a beautiful feeling
Everything’s going my way
ああ、何て美しい朝なんだ
ああ、何て素晴らしい日なんだろう
気分はすこぶる爽快だ
全てが僕の思いのままさ
(JASRAC 出 1913463-901)
『オクラホマ!』というミュージカルの名曲です。私が生まれ育ったアメリカの南ダコタ州は、海から2000キロメートル以上離れているアメリカ大陸の真ん中にあるので、そこで生まれ育った人は生涯海を見る機会がほとんどありません。私のおばあちゃんもそうでしたし、私自身も20歳で日本に来る時に初めて海を見たので、本物の海を目の前にした時は思わず涙が溢れてきました。海を眺めると地球上の生命が誕生した場所だということを体が感じ取るようです。やっぱり海が私たちの命の源なんですね。しかし京都に住んで50年も経った今、露天風呂に入りながら、美しい海に囲まれて口ずさんだのが、草原地帯の『オクラホマ!』の歌とは面白いものです。海の雄大さや開放感が、私の生まれ育った大草原と似ているからかなぁ?
伊根には、美しい景色、受け継がれてきた素晴らしい文化、そしておいしい海の幸もたくさんあります。歩いてもいいし、自転車でもいいです。しっかりと海の京都も機会があれば楽しんでください。
『オクラホマ!』。そういえば、これはおばあちゃんが大好きなミュージカルでした。
もしかしたら、一緒にこの景色を楽しんでくれていたのかもしれません。
おばあちゃん、京都の海は最高でしょ。