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三洋化成ニュース No.519
2020.03.13
世界市場で大きなシェアを占める日本の半導体、電子部品はパソコンやスマートフォンなどの普及で大きな進化を遂げ、近年では、家電のIoT化や自動車の電装化などにより、着実に需要を伸ばしています。一方で、新たな通信規格5Gの登場により、さらなる小型化、高速化も求められています。この電子部品に欠かせない材料が、ファインセラミックスです。
セラミックスは簡単に言えば、金属以外の無機材料を粘土のように練って焼き固めたもの。陶器はもちろん、広い意味ではコンクリートやガラスなども分類されます。耐熱性や耐久性に優れ、電気を通さない性質も持つため、1800年代半ばに電気が登場した頃から絶縁材料などに使用されてきました。20世紀にトランジスタが発明され、エレクトロニクスの時代を迎えると、その材料となるセラミックスはさらに進化。1970年代には電子部品の高性能化や小型化がさらに進み、特殊な原料と製造方法で作られた、より高性能なファインセラミックスが登場しました。
ファインセラミックスは、電磁的、光学的、機械的などに高度な機能を有した高精度な工業用材料です。使用する原料により、電気の通電、遮断、発生、増幅などの性能が得られるため、トランジスタやコンデンサといった電子部品には欠かせない材料となっています。使用されるファインセラミックスは、コンマ数ミリの小さなもの。スマートフォンで300〜400個、ノートパソコンやタブレットでは700〜800個が使われています。
ファインセラミックスは主原料となる無機材料の粉末を粘土のようにして焼き固めて作ります。そのままの状態では塊ができて均一な粘土状にならず、狙った性能を得ることができません。そこで、水などで溶いてスラリーと呼ばれる液状にして、粒子を均一にほぐします。その際、水と原料だけではスラリーの粘度が高すぎ、成形に時間がかかり、品質にも影響が出てきます。そこで、粘度を下げて均一なスラリーを作るために用いられるのが分散剤です。
分散剤には、粒子を水などにぬれやすくしてほぐしたり、ほぐれた粒同士が再び結び付かないようにする役割があります。ただし、あくまで製造用の添加剤のため、最終のセラミックスの性能を妨げないことが求められます。投入する量は、材料の1% 以下というケースがほとんどです。一方で、電子部品の小型化、高性能化に伴い、原料の粒子もさらに細かくなっていますが、粒子が小さくなればなるほど、粒子同士が再び凝集しやすくなるため、分散剤にもより高い性能が求められています。
こうした厳しい条件下で、高い性能を発揮しているのが、サンノプコのセラミックス製造プロセス用分散剤です。代表的な製品である『ノプコスパース5 6 0 0』は、電気特性や強度などに悪影響を与えるアルカリ金属や硫化物を含んでおらず、電子工業用のセラミックス用途に安心して使えるのが特長です。1980年代に誕生してから、多くの大手セラミックスメーカーで採用されています。主材料ではないため表には出ることはありませんが、製造工程にはなくてはならない製品であり、長年にわたり日本の電子部品産業を下支えしてきた製品といえます。
サンノプコではほかにもさまざまな用途に対応するセラミックス用分散剤をラインアップしており、より小型化する次世代のファインセラミックスへの研究開発も推進中です。これからも、電子部品の開発を陰で支えながら、持続可能で、より豊かな暮らしの実現に貢献していきます。