MENU
三洋化成ニュース No.521
2020.07.28
深刻化する地球温暖化問題を解決するためには、自動車のCO2排出量低減は避けて通れない問題です。
各国でCO2削減目標が掲げられるなか、自動車の省燃費化を進め、CO2排出量低減に貢献する製品を紹介します。
自動車業界ではこれまでも、エンジンの性能向上や空力改善、車体の軽量化など、CO2排出削減に向けたさまざまな取り組みが進められてきました。エンジンオイルの性能向上もそのなかの一つです。
自動車のエンジンを心臓に例えると、エンジンオイルはエンジン内部を循環する血液といえます。高速で動く金属部の摩耗や焼き付きを防ぐとともに、ピストンとシリンダー間の気密性を保つことでエネルギーロスを低減し、燃費を向上させる役割も果たします。エンジンオイルは、鉱物油や合成油からなるベースオイルと添加剤で構成されています。添加剤が果たす役割はさまざまですが、オイルの粘度調整は、添加剤の重要な役割の一つとなっています。
粘度とは、液体の粘りによる流れにくさのことです。液体は、高温になるとさらさらの低粘度の状態になり、低温になると粘りが強い高粘度の状態になります。
エンジンオイルの場合、エンジン始動時など低温時には低粘度の方が燃費は向上しますが、高速走行時などの高温になるにつれて粘度が下がりすぎると、油膜厚の低下でエンジンの保護性能が悪化します。そのため、温度による粘度変化の少ないものが高性能オイルとされます。
温度による粘度の変化は粘度指数で表され、数値が大きいほど温度変化に対する粘度変化が小さいことを意味します。粘度指数の大きいオイルは、低温時に低粘度でも、高温時の粘度が低くなりすぎないため、省燃費とエンジン保護を両立できるのです。
エンジンオイルに添加し、温度変化に伴う粘度変化を低減するのが粘度指数向上剤(VII)です。主成分は油溶性のポリマー。オイルに添加した場合、高温では原子がつながったひも(分子鎖)が伸び広がることによってオイルの粘度低下をカバーし、低温では分子鎖が収縮して粘度を上昇させない働きをします。
このVIIにはOCP系とPMA系の2種類があります。OCP系は低コストですが、オイルに溶けやすいため、低温でも分子鎖が広がったまま粘度が高くなるという短所があります。一方のPMA系は適度に溶けにくい特性があるため、低温では分子鎖が収縮し、粘度を低く抑えることができます。省燃費へのニーズの高まりから、近年はPMA系が需要を伸ばしています。
三洋化成の『アクルーブ』シリーズは、このPMA系のVIIです。特殊な設計により他社製品と比べて高温時の保護性能を保ったまま低温でのオイル粘度をより低く保てるため、さらなる燃費向上が図れます。2020年5月には新たにGF-6対応グレードを追加。添加量の低減で低コストを実現した『アクルーブ V -6010』、省燃費性に優れる『アクルーブ V -6050』、最も低粘度なオイル0W-16規格に対応可能な『アクルーブ V -7010』など、さまざまなニーズに合わせた製品をラインアップしました。
『アクルーブ』シリーズは現在、PMA系では国内シェア1位、海外でも2番手のシェアがあり、世界の自動車の省燃費化やCO2削減を通して、SDGs が示すエネルギー問題や気候変動対策にも貢献する製品となっています。
世界の自動車保有台数は今後もさらに増大するとみられており、一部は電気自動車(EV)へ移行するものの、ハイブリッド車などのエンジン車は、まだまだメインで市場を形成すると考えられます。深刻化する地球環境問題からCO2の削減がより一層叫ばれる今、自動車の省燃費化に貢献するVIIには、さらなる高性能化が求められています。三洋化成は今後も引き続き開発を続け、より高性能な製品を市場に送り出していきます。