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三洋化成ニュース No.523
2020.11.16
現在の血液検査ではさまざまな病気を調べることができ、早期発見、早期治療に大きな役割を果たしています。
今回は、甲状腺疾患の分野で新たな検査項目を追加し、正確な診断はもちろん、患者さんの待ち時間短縮や病院の業務の効率化にも貢献する製品を紹介します。
体のだるさや無気力など、原因のわからない体調不調に悩まされることはありませんか。実はこうした症状には甲状腺の病気が潜んでいる可能性があります。
甲状腺は首の付け根の前側にあり、血中に甲状腺ホルモンを放出することで、体内の各器官の働きを調整する役割を果たしています。そのため甲状腺の異常は、全身の不調につながる恐れがあるのです。
甲状腺の疾患には、腫瘍をはじめ、ホルモンバランスが崩れる甲状腺機能亢進症や低下症があり、ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症では「バセドウ病」、ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症では「橋本病」などが代表的な疾患です。主に20〜50代の女性に多くみられ、男女比はおおよそ1:3〜5といわれています。※1
これら甲状腺疾患のうち、バセドウ病は、動機や息切れ、多汗、微熱など、橋本病は、眠気、物忘れ、むくみ、息切れなどの症状があります。特にバセドウ病を放置すれば、心不全や甲状腺クリーゼなど、命に関わる病気を引き起こすこともあるため、早めの治療が必要です。※1:内分泌学会ホームページより
病気を発見するためには検査が必要ですが、甲状腺疾患の検査では、超音波や触診検査のほかに、血液検査で甲状腺ホルモン濃度や甲状腺自己抗体の有無を調べる方法があります。
血液検査では、まず疾患に伴って血液中に遊離した、甲状腺ホルモンそのもの (FT3、FT4)や、ホルモンの分泌を調整する甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定し、甲状腺機能が正常か亢進、あるいは低下しているか分類します。そのうえで、甲状腺自己抗体(Tg Ab、TPOAb、TRAb)の検査を行い、その数値によって病気を特定します。
バセドウ病や橋本病などの自己免疫疾患は、本来細菌やウイルスを排除するために働く自分の抗体が、甲状腺内にある自己のタンパク質などを誤って攻撃してしまうことが原因で起こります。そのため、抗体の有無や量を測定することで、疾患の種類を判断できるのです。
こうした臨床検査を簡単で迅速に行うために役立っているのが、三洋化成と富士フイルム和光純薬が共同開発した自動化学発光酵素免疫分析装置「Accuraseed®」とその専用試薬です。装置を富士フイルム和光純薬が製造し、同社と三洋化成が専用試薬を製造しています。
アキュラシード専用試薬は血液中のさまざまな物質のなかから、疾患の指標となるホルモンや抗体などを調べる検査試薬です。独自に開発した磁性粒子『マグラピッド』を採用することで、測定対象となる物質をより短時間で測定することができます。
これまで当社が発売していたSphereLight Wako(スフィアライト ワコー)専用試薬や一般的な検査試薬での検査時間は20分が主流で、速いものでも15分程度でしたが、「Accuraseed®」では全項目の測定時間を10分と大幅に短縮。迅速測定を実現しました。
アキュラシード専用試薬は2015年の発売以降、順次ラインアップを増やしており、検査速度の大幅な短縮が強みとなり、新たな病院への導入も進んでいます。
この10月より甲状腺自己抗体(TgAb、TPOAb、TRAb)用の検査試薬を追加。現在は甲状腺領域も含め、がんや感染症、心疾患、高血圧、糖尿病など、ニーズの高い検査項目30種類に対応する検査試薬をラインアップしています。また引き続き、医療現場のニーズに応じた検査項目の追加も検討中です。三洋化成では、今後もさまざまな疾患に対応した検査試薬の開発を通して、臨床現場における医療の質の向上に貢献していきます。