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[vol.6] 満開!お花見ステーション

三洋化成ニュース No.525

[vol.6] 満開!お花見ステーション

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2021.03.26

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文・写真=鉄道写真家 中井精也

ソメイヨシノとハナモモに飾られた温泉の玄関駅。見頃は4月中旬~下旬 (2017.4.30/会津鉄道 湯野上温泉駅)

寒かった冬も終わり、いよいよ花咲く春が近付いてきます。春の旅にはいろいろなカタチがありますが、鉄道写真家である僕のオススメは、列車に乗って行くお花見ステーション! 街の入り口でもある日本の駅には、玄関を美しく飾ろうと、たくさんの桜が植えられています。ふだんは寂しい駅も、春になると桜が駅を飾り、とても贅沢な光景に変わるのです。 残念ながら今年は、みんなで出かけてお花見しながらどんちゃん騒ぎは難しそう。今回は、僕のオススメお花見ステーションを紹介します。誌面上でのお花見をお楽しみください。

茅葺き屋根の駅舎がお出迎え  奥会津の桜駅

福島県を走る会津鉄道の湯野上温泉駅(上の写真)は、東北の駅百選にも選ばれた、とても絵になる駅です。まだ雪が残った山々をバックに、駅構内を包み込むようにソメイヨシノが咲き乱れ、ハナモモも鮮やかなピンク色を添えてくれます。観光名所「大内宿」をイメージした駅舎の屋根は、なんと全国でも珍しい茅葺きづくり。 駅舎内には囲炉裏もあり、旅情満点! 温泉の玄関駅だけに、ホーム横には足湯もあり、無料で温まりながら、桜と列車を眺めることもできます。 また、会津鉄道には「お座敷列車」と「展望列車」と「トロッコ列車」を合体させた、ちょっと欲張りな「お座トロ展望列車」が運行されるので、奥会津の車窓風景を楽しみながら、お花見ステーションを目指してみてはいかがでしょう?

大都会東京の穴場スポット  最後の都電と桜の風景

東京にも桜の名所はたくさんありますが、オススメは都電荒川線の荒川二丁目電停付近。線路と荒川自然公園の間に桜並木が続き、その下を東京で唯一生き残った都電が一生懸命走ります。この日も下の写真の桜吹雪を狙っていると、ホームにおじいさんとお孫さんがやってきました。ちょうどその時風が吹き、目の前に飛んできた桜の花びらを、お孫さんが見事にキャッチ! 欲しいと思ったものにまっすぐに手を伸ばせる子どもの素直さが、少しまぶしく見えた53歳の僕でした(笑)。

桜吹雪の都電を望む。見頃は3月下旬~4月上旬(2015.4.1/都電荒川線 荒川二丁目駅)

 

ちいさな春をつかまえた!(2015.4.1/都電荒川線 荒川二丁目駅)

そうそう、この駅からわずか3駅先の三ノ輪橋電停には、僕のギャラリー「ゆる鉄画廊」がありますので、ぜひお花見のついでにお立ち寄りくださいね(笑)。

幻想的な夜桜に酔いしれてボリューム満点の桜駅

続いては神奈川県にある御殿場線の山北駅。こちらも駅から線路に沿って桜並木が続いており、かなりボリューム感のある桜を愛でることができます。昼間ももちろんキレイですが、夜にはライトアップが施され、現実とは思えない幻想的なシーンになります。下の写真は、夜空に映える桜を主役に、列車は副題として写したもの。まるで能の舞台のようなつややかな夜桜の風景に、ほれぼれしながらシャッターを切りました。

まるで能の舞台のようなつややかな夜桜。見頃は4月上旬(2019.4.4/御殿場線 山北駅)

淡墨桜へ向かう列車で見つけた珠玉のお花見ステーション

岐阜県にある桜の名所といえば「淡墨桜」が有名ですが、その最寄りの樽見駅へ向かう樽見鉄道の沿線にも、隠れた桜の名所がたくさんあります。ピカピカの新入生がホームへ向かう下の写真を撮影したのは谷汲口駅。ここは淡墨桜から枝分けされたという見事な桜が、駅を囲うように咲き誇ります。

ピカピカの春が来た!(2004.4.13/樽見鉄道谷汲口駅)

下の写真は高科駅で撮影したもの。写真には写っていませんが、ホーム脇に立つ2本の桜と可愛い駅の風景の組み合わせはとってもキュート。写真は川の反対側にある「根尾川ガーデン」のハナモモを入れて撮影しました。ふだんは施設の庭園ですが、ハナモモが満開になると駐車場が開放され、誰でも楽しむことができます。沿線の桜の見頃は、4月初旬から中旬にかけてになります。

ハナモモのカーテンの向こうに。見頃は4月上旬(2019.4.9/樽見鉄道 高科駅)

 

映画のロケにも使われた知る人ぞ知る春の絶景

最後に紹介するのは佐賀県にある筑肥線の駒鳴駅(下の写真)。ここは松山ケンイチさん主演の映画「僕達急行A列車で行こう」のロケ地にもなった、知る人ぞ知る駅。可愛いホームの横には立派なソメイヨシノがあり、周囲に何もない駅を際立たせてくれます。菜の花と桜に飾られた風景に、菜の花色の列車がよく似合います。こんな列車で、桜の咲く駅に、ぶらり途中下車してみたいと思いませんか?

可愛い桜がお出迎え。見頃は3月下旬(2019.3.30/筑肥線 駒鳴駅)

今回ご紹介した駅のほかにも、全国にはまだまだたくさんのお花見ステーションがあります。鉄道旅なら、飲酒だってOK。ぜひスマホのスイッチはオフにして、駅のベンチに座ってぼ〜っと桜を眺めれば、きっと疲れたココロも、癒やされるはずですよ。    

クリックで写真のみご覧いただけます

 

 

〈過去にゆる鉄ファインダーでご紹介した写真をこちらからご覧いただけます〉

 

〈なかいせいや〉1967年東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道に関わる全てのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影する。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。著書・写真集に『1日1鉄!』『デジタル一眼レフカメラと写真の教科書』など多数。株式会社フォート・ナカイ代表。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。

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