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三洋化成ニュース No.526
2021.06.10
新型コロナウイルスの感染拡大により、手洗いの重要性が再認識されています。
手洗いによる抗菌・抗ウイルスをより効果的なものにするとともに、
手荒れを防ぐなど、ハンドソープをより良く使用いただけるよう、さまざまな界面活性剤を紹介します。
手洗いは手に付いた汚れを落とすだけでなく、菌やウイルスを洗い流すのにも有効な手段です。
ある研究では、手洗いしない場合の残存ウイルス数を約100万個とすると、流水のみで手洗いした場合でも一定の効果があり、ウイルスの量は100分の1の約1万個まで減らせますが、ハンドソープを使って約30秒手洗いするとウイルスを除去する力がアップし、1万分の1の数百個まで、それを2回繰り返すと100万分の1の数個まで減らせることが確認されています。
ただし手を洗いすぎると、今度は手荒れを引き起こすなどの問題も出てきます。そのためハンドソープには、洗浄力を保ったうえで、問題を軽減するさまざまな工夫も求められています。
ハンドソープの性能のなかでも、基本となる洗浄力を生み出すのが界面活性剤です。一つの分子が持つ「親水性」と「親油性」が、水と油のように混じり合わないものを混じり合わせ、不要なものを洗い流す働きをします。
界面活性剤は親水基のイオン種別に分類すると、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性の4種類があります。ハンドソープの洗浄成分としては、洗浄力に優れるアニオン性界面活性剤を使用するのが一般的です。一方で、殺菌・抗菌を目的に医療現場などで使われる「逆性石鹸」には、カチオン性界面活性剤が使用されています。
ただし、カチオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤と併用すると反応して沈殿してしまうため、基本的に同じ製品に使われることはありません。現在市販のハンドソープの殺菌成分は、主にイソプロピルメチルフェノールが使用され、カチオン性界面活性剤が使用されることは少ないです。
ちなみに菌やウイルスへの有効性を示すため、殺菌、抗菌、抗ウイルスなどの言葉がよく使われますが、この違いをご存じでしょうか。殺菌は文字通り菌を殺すことで、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の対象となる製品にしか使用されません。また抗菌は菌の自己増殖機能を阻害することで、基準を満たした一般製品にも使用されます。
一方の抗ウイルスは、抗菌と区別され近年使われるようになった言葉です。実は、菌とウイルスは全くの別物で、ウイルスは菌とは異なり自己増殖機能がなく、宿主細胞に感染して初めて自身のコピーを複製させて増殖することができますが、ノロウイルスなどが一般的に認知されるようになるまでは、菌と一くくりで語られてきました。抗ウイルスの作用機構はさまざまありますが、例えば宿主細胞への感染能力を低下させることによって増殖を抑制することが挙げられます。2020年に経済産業省は新型コロナウイルスに効果がある多数の界面活性剤を報告しており、界面活性剤に対して、抗ウイルス効果への期待が高まっています。
長年、界面活性剤の研究を進めてきた三洋化成では、低皮膚刺激性でありながら洗浄性や起泡性に優れたアニオン性界面活性剤『ビューライトLCA -25F』や、起泡性を補助するノニオン性界面活性剤『フロスマイスターシリーズ』などに加えて、抗菌機能を有するさまざまな界面活性剤を製品としてラインアップしています。
なかでも食品工業や工業用の抗菌剤などの基剤として製造・販売している『カチオン G -50』は、経済産業省が新型コロナウイルスに効果があると発表している界面活性剤『塩化ベンザルコニウム』を主成分としています。ほかには、アニオン性界面活性剤とも配合でき、皮膚への刺激が低い両性界面活性剤『レボンT -2』や、洗浄剤の起泡性を補助するノニオン性界面活性剤『ニューポールDDE -10』などの抗菌機能を有する界面活性剤もそろえており、現在三洋化成ではこれらの抗ウイルス効果の検証を進めるほか、新たな抗菌・抗ウイルスの機能を有する素材開発の可能性を検討しています。
市販のハンドソープの需要はコロナ禍で急激に高まっており、前年比で約2倍といわれています。抗菌・抗ウイルスといった機能を加えることは、今後必須の課題となってくるでしょう。また、洗いすぎによる手荒れを防ぐといった付加価値も、これまで以上に求められることが予想されます。
三洋化成では、これまで培ってきた界面活性剤技術を活かし、抗菌・抗ウイルスも含めた多様なニーズに応える製品開発を進めています。今後も使いやすく、かつ抗菌・抗ウイルスの機能を持つ界面活性剤のラインアップを充実させ、ウィズコロナの世界でもSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に貢献していきます。
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