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三洋化成ニュース No.530
2022.01.14
コンデンサは、ほとんどの電子機器で使用されており、私たちの生活に密着した電子部品のひとつです。
持続可能な社会を目指して電力へのエネルギーシフトが進むなか、コンデンサの性能を内部から支える技術を紹介します。
コンデンサは、一時的に電気を蓄えたり放出したりできる電子部品です。パソコンやスマートフォンはもちろん、家電からEVまでほとんどの製品の内部にある電子機器に使用されています。コンデンサは基本的には同じ構造をしており、電気を流さない絶縁体(誘電体)の両側に+-の電極が配置されています。間の絶縁体が電気を通さないため、両方の電極に電気を蓄えることができるのです。
コンデンサには、大きく分けてセラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ、電解コンデンサの三つの種類があります。これらは使われる絶縁体の種類によって特性が異なるため、用途によって使い分けられています。
セラミックコンデンサは、高周波に対しても安定している性質を持っており、スマートフォンなどの通信機器に搭載されることが多く、フィルムコンデンサは温度による影響が少ないため、オーディオやEVのインバータなどに使われています。電解コンデンサは他のコンデンサより電気を多く蓄えられるのが特長で、EVやエアコン、産業機器の電源など、一時的にたくさん電気を受け止める必要がある電源周りの回路に多く使用されています。
電解コンデンサのなかでもアルミ電解コンデンサは、アルミ自体が安価に手に入ること、また加工性に優れていることから、電解コンデンサの主流となっています。
アルミ電解コンデンサは、アルミ表面に酸化被膜を形成することで、これが絶縁体の役割を果たし電気を遮断します。この酸化被膜は多孔質になっており、表面積を稼ぐことができるため、他のコンデンサに比べ1000倍以上の電気を蓄えることができるのです。
ただし酸化皮膜は時間とともに欠陥ができ、絶縁体ではない部分ができてしまいます。これがショートなどの原因となるため、その部分を再度酸化させ修復する必要があります。その役割を担っているのが電解液です。電解液にはできるだけアルミにダメージを与えず酸化被膜を再度形成する能力が求められます。一方で、電解液は液体のため、シール用のゴムに負担がかかると液漏れを起こしてしまいます。過去にはこの液漏れが、コンデンサ業界最大の課題でした。
アルミ電解コンデンサは、電極内部のイオンが活発に動くことで電気を効率よく蓄える仕組みを持っています。ただし使用中に発生するアルカリ成分が、シール用のゴムやリード線の腐食を促し、これが液漏れの原因となっていました。イオンの移動速度が速い既存の物質ではこの現象が起こりやすいため、電解液にはアルミにダメージを与えず酸化被膜を再度形成する基本的な性能とともに、イオンの移動速度を損なうことなくシール用のゴムにもダメージを与えない機能が求められていました。
『サンエレック』は、独自の構造によりイオンの移動速度はそのままに、出てきたアルカリを中和し無害化することに成功。コンデンサ業界の最大の課題だった液漏れを克服し、1990年代半ばの誕生から幅広い分野で使用されてきました。現在は業界標準のロングラン製品となっており、自動車の制御ユニットなど、より信頼性が求められるコンデンサにも採用されています。
現在自動車業界では、安全装置やカーナビといった電装部品が増えるとともに、環境対応への流れからEVへのシフトが加速しています。また一般的な電子機器はもちろん、通信の発達によるサーバーの普及、製造現場における産業機器のロボット化などもあり、コンデンサの需要があらゆる分野で年々増加しています。さらに太陽光や風力発電などエネルギー供給の多様化に伴い、送電側の装置でも今以上に必要となる可能性が出てきており、より高電圧な電気に対応できるコンデンサも求められています。
三洋化成では、コンデンサの寿命をさらに伸ばすとともに、高電圧への対応など新たな研究開発も推進中。『サンエレック』自体の性能の向上に加え、長寿命化や高電圧化をサポートするための添加剤の開発も進めています。
このように、直接的にはSDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献している『サンエレック』ですが、見えない部分で私たちの生活に密着しており、間接的には持続可能な社会全体を支えている技術といえます。
また一般の家電製品から社会のインフラを支える重要な電子部品まで、幅広い役割を担う業界標準の製品だけに、品質のさらなる改善が求められています。三洋化成では今後も、社会に不可欠な技術を供給している使命感を持ちながら、将来に向けた技術の開発を続けていきます。