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UV硬化樹脂 サンラッドシリーズ、ネオジェットシリーズ

三洋化成ニュース No.530

UV硬化樹脂 サンラッドシリーズ、ネオジェットシリーズ

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2022.01.14

高機能マテリアル事業本部 研究部 電子材料研究グループ

ユニットマネージャー 山下 真友子

[お問い合わせ先]
高機能マテリアル事業本部 電子材料営業部

 

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UV硬化樹脂とは紫外線(UV)を照射することで硬化する樹脂で、機械特性、電気特性、耐薬品性、耐熱性などに優れており、塗料、インク、電子材料、コーティング、半導体などの幅広い分野、産業で使用されている。また近年、環境や健康への配慮からVOC成分となる有機溶剤を使用しないUV硬化樹脂システムが注目されている。本稿では当社のUV硬化樹脂『サンラッド』、『ネオジェット』シリーズについて紹介する。

UV 硬化樹脂とは

UV硬化樹脂は通常の熱硬化樹脂と比較して、表1のようにさまざまな観点で優れており1)、さらに光源をLEDにすることでより省エネルギーに硬化物を作ることのできる硬化システムである。

 

 

UV硬化樹脂は、大きく分けてラジカル重合系とカチオン重合系がある。なかでも、ラジカル重合系は硬化速度が速く、素材のバリエーションが多様なことから主流となっている。ラジカル重合系は、ラジカル重合性の(メタ)アクリレート基を含有するモノマーやオリゴマーと光ラジカル重合開始剤、酸化防止剤などの添加剤を含有した組成物である。UV照射により光ラジカル重合開始剤からラジカルが発生して重合が始まり、瞬時に硬化する。

UV硬化樹脂はさまざまな分野、用途で使用されているので、その使用方法に応じた組成設計が必要となる。プロセスに関わるところでは、塗布方法に合わせた粘度や表面張力などの調整や、光源に合わせた光重合開始剤の選定、物性面では機械物性、界面特性(基材密着性、離型性)、光学特性(屈折率、透過率)、環境特性(耐熱性、耐光性)などといった要求性能に合わせた、剤の選定や配合比率の最適化などである。当社では従来から特殊なモノマーやポリマーの設計を通じてUV硬化樹脂を開発してきており、得意とする界面制御技術と組み合わせることで、ユーザーニーズに応じたUV硬化樹脂を提供している。

 

金型からの離型性の高いUV 硬化樹脂

物質の表面は微細加工を行うことで、新たな特性や機能を付与することができる。その加工方法の一つに表面に微細な凹凸を有する金型を樹脂に押し当てた後、硬化させてパターンを作成する「インプリント(転写)方式」がある(図1)。インプリント方式は、単純なプロセスで、加工精度の良好な微細加工が大面積に施せることから、半導体、記録媒体、バイオ、光学部材などさまざまな分野で注目されている。インプリント方式にはUV硬化方式と熱インプリント方式がある。UV硬化方式は熱インプリント方式と比較して高熱をかける必要がないため、熱に弱い部材にも適用可能である。また微細なパターンにも対応でき、短時間で製造できるため省エネ性に優れるというメリットもある。本方式ではUV硬化樹脂をPETフィルムなどの基材フィルムに塗布し、金型を押し当ててUV照射、硬化させ、その後離型することで微細なパターンを持つフィルムを得ることができる。微細なパターンを形成するためのUV硬化樹脂の性能としては液状状態での金型への入り込み性、成型物の金型からの離型性、基材フィルムとの密着性、寸法安定性などが必要となる。

 

 

当社の『サンラッド』シリーズは独自に設計した特殊離型剤を配合し、高い離型性を発揮できるよう設計し、特殊形状や微細なパターンでも高精度な転写を可能としている。また、微細な成型ができるだけでなく、金型に樹脂が残りにくく、金型の摩耗低減にも役立っている(図2)。

 

 

用途やニーズに合わせて選択できるよう多彩なラインナップを展開し、ユーザーの用途、使用方法に応じたカスタマイズも行っている(表2)。

 

 

基材密着性の高いUV 硬化樹脂

UV硬化樹脂を基材のガラスや種々フィルムに塗布し、UV照射して硬化膜を形成する際、硬化収縮が起こり、膜内部に応力が発生すると基材から硬化膜が剥がれてしまう原因となる(図3)。特にポリオレフィン(PP、PE)などの非極性基材はUV硬化樹脂との親和性が低く、密着性が悪い。

 

 

この課題に対し、当社は基材密着性の高いUV樹脂『ネオジェット』シリーズを開発した。本シリーズは、独自に設計した基材への親和性の高い化合物を配合し、硬化収縮を低減させ、非極性のポリオレフィン基材やガラス、金属への密着性を実現している。(図4)

 

 

表3に『ネオジェット』シリーズの一例を示す。『ネオジェット PAD』はポリオレフィンなどの非極性基材への密着性が高いグレードであり、ポリオレフィンとSP値を近づけることで高い密着性を発現している。またLED光源にも対応しており、LED光源で硬化させることで省エネにつながるだけでなく、通常の高圧水銀ランプやメタルハライドランプではUV照射時の熱でダメージを受けるPPやPEフィルムへのダメージも低減できる。本製品は各種フィルムのプライマーやコーティング材に適している。

 

 

類似の設計思想で、ガラスや金属への密着性が高い製品が『ネオジェット GMAD』である。本製品もLED光源に対応している。これらは金属配線の保護膜、絶縁膜に適している。

 

靭性の高いUV 硬化樹脂

近年、種々電子材料のフレキシブル化、スマートフォンのフォルダブル化、自動車の内装用の加飾フィルムなど、硬さ(硬度、弾性率)と伸びを両立するUV硬化樹脂が求められているが、従来のUV硬化樹脂ではそれを満たすことが難しかった(図5)。例えば、ハードコート材は多官能のアクリレートを多く使用しており、その硬化物の硬度、弾性率は高いが、多官能アクリレート由来の架橋構造が形成されるため、伸びはほとんどない。また、接着剤などに使われるUV粘着剤はその硬化物のガラス転移点を低く設計することで基材などとの密着性を発現しており、伸びや柔軟性に優れている一方、ガラス転移点を低く設計するために架橋構造があまりなく、弾性率は低い。当社のじんせいの高いUV硬化樹脂『サンラッド TS』『ネオジェット FL』シリーズは硬度と伸びを両立したグレードであり、硬化後の樹脂が硬くて割れにくいため、成型加工性に優れている(表4、図6)。これらは光学フィルム、各種電子部品の保護材などに適している。

 

 

 

 

終わりに

ディスプレイ、電子機器のフレキシブル化、フォルダブル化、高性能化に伴い、UV硬化樹脂に対する要求性能も高くなってきている。このようなニーズに対応するべく、これからも開発に注力し、新たなグレードを生み出していきたい。

 

参考文献
1)UV・EB硬化材料の開発(シーエムシー出版)

当社製品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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