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三洋化成ニュース No.534
2022.09.21
プラスチックは社会で広く使われています。ただ絶縁性が高く帯電しやすい特性があり、たまった静電気がさまざまな不具合を引き起こすことがあります。そのプラスチックの導電性を高め、静電気によるトラブルから製品を守る技術を紹介します。
世の中にあるモノはすべてプラスとマイナスの電気を持っていますが、通常はつり合いがとれているため、電気的に安定した状態を保っています。
プラスチックなどの電気が流れにくい物質(絶縁材)ではこのつり合いが崩れやすく、プラスもしくはマイナスどちらかの静電気を帯びることがよく起こります。この電気を帯びた状態を帯電と言います。
一方で、たまった電気が流れる現象を放電と言います。帯電した物質は電気的に不安定なため、安定した状態に戻ろうと電気を放出します。冬場、ドアノブなどに触れると「バチッ」と電気が走り痛みを感じるのは、人体に帯電した電気がドアノブに一気に流れることで起こります。
こうした状態は、さまざまなトラブルを引き起こします。身近なところでは、帯電によるほこりの吸着や、放電による電子部品の破壊。工場などでは、大気中に浮遊した可燃性の粉じんに、放電によってできた火花が着火して爆発を起こす「粉じん爆発」につながる危険性もあります。
このような帯電によるトラブルを防ぐのが帯電防止剤です。静電気を帯びやすいプラスチックに塗布したり混ぜ込んだりして使用します。帯電防止剤は、電気を流しやすくする物質ですが、流しすぎるとスパーク(直接放電)を起こす危険性があるため、適度な導電性が求められます。
帯電防止剤には、大きく分けて低分子の界面活性剤、カーボンブラックなどの導電性フィラー、高分子型の3つのタイプがあります。
界面活性剤は少量で効果を発揮しますが、電気を流す機能が湿度に依存することや、持続性がなく時間が経てば効果が薄れる欠点があります。カーボンブラックは抵抗値が低く持続性もありますが、プラスチックに対して20〜30%の添加量が必要なうえ、プラスチック内に均等に分散させることが困難です。また色の特性から、黒い製品にしか使えず、プラスチックから脱落して汚れの原因になるという欠点があります。
高分子型は、プラスチックに練り込み相容化させるため、湿度依存性がなく脱落などの問題もありません。半永久的に効果が持続するので、現在では幅広い用途に利用されています。
三洋化成はこの高分子型帯電防止剤として『ペレスタット』と、より性能を高めた『ペレクトロン』を上市しています。
『ペレスタット』『ペレクトロン』は、電気を流しやすくする成分とプラスチックに混ざりやすい成分の両方を持っているのが特徴です。練り込んで使うのでプラスチック自体の性能に大きく影響しないように設計されているのはもちろん、表層にたまりやすい電気をより流しやすくするため、製品の成形時には、帯電防止剤が表層に集まる工夫も施されています。
こうした高い性能が評価され、現在は、ほこりの付着防止の用途として掃除機のダストボックスやエアコンのカバー、防爆の領域では粉末や粒状物の荷物を保管・運搬するフレキシブルコンテナバッグやヘルメットなどに活用されています。また医療関係では粉体薬剤の吸入器に利用されているほか、粉体薬剤原料の搬送資材にも活用されています。さらに電子部品の分野では、小型化・高性能化により静電気に対する耐性が弱くなっていることから、より高性能な帯電防止機能が求められており、電子部品搬送用トレーなどで、これまで以上に需要が高まっています。
『ペレスタット』『ペレクトロン』はこうした製品自体の性能に加え、三洋化成が持つこれまでのノウハウを活かした提案力や、きめ細かい製品設計といった対応力もお客様から高く評価されており、実績を伸ばしています。
4月には新しく「樹脂・機能化学品紹介サイト」も立ち上げ、お客様への情報提供を積極的に行うとともに、電子材料や医療分野での新たな用途開発なども検討しています。
また電子材料分野での需要の拡大を受けて、生産体制も増強しています。この7月からはタイの関係会社 サンヨーカセイ(タイランド)リミテッドのラヨーン工場(タイ・ラヨーン県)での生産を開始し、日本と合わせ年間4700トンの生産体制を確立しました。
高分子型帯電防止剤『ペレスタット』『ペレクトロン』は、プラスチックが活用されている幅広い領域で、産業を下支えする製品です。今後も技術力や蓄積したノウハウを活かしながら、三洋化成は社会に貢献していきます。