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慢性腎臓病患者さんの命を守る人工腎臓用の接着剤

三洋化成ニュース No.535

慢性腎臓病患者さんの命を守る人工腎臓用の接着剤

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2022.11.28

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毒素を尿として排出するなど、生命の維持に重要な役割を果たす腎臓。
そのため腎機能が低下すると、血液を腎臓の代わりに浄化する措置が必要になります。
そのフィルターとなる人工腎臓の加工に使用される接着剤を紹介します。

生命維持に欠かせない多くの機能を持つ腎臓

腎臓は、毒素を尿として排出する、血液に関わるホルモンをつくる、カルシウムの吸収を促すビタミンDをつくるといった、生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。

腎機能が低下すると、尿の濃縮力が低下して多尿となり、夜間頻尿などの症状が起こります。これがさらに悪化すると、身体に余分な水や毒素がたまり、生命の維持ができなくなる危険が出てきます。初期は薬による対処療法で現状維持を図りますが、腎機能はいったん悪化すると回復することがないため、悪化が進むと人工的な血液の浄化や移植などで、腎臓の機能を代行する必要が出てきます。

血液浄化にはいくつかの方法がありますが、現在最も広く使用されているのが人工透析です。人工透析を受けている患者さんは年々増え続けており、日本では2020年末で約35万人まで増加しています(日本透析医学会統計調査参照)。こうした人工透析が必要な代表的な慢性腎臓病には、糖尿病腎症や高血圧性腎障害などがあります。

 

血液を濾過するフィルターの役割を果たすダイアライザー

人工透析は、患者さんが寝転んだり椅子に座った状態で、点滴のような針を腕に2カ所差し込んで行います。一方から全身の血液を体の外に出して透析器の中で濾過ろかし、もう一方からきれいな血液を体内に戻します。標準的な頻度は週3回で、1回あたりにかかる時間は約4時間。体内全ての血液をかなりのスピードで浄化するので、体への負担も大きい治療です。

この人工透析の際に使用する血液のフィルター(濾過機器)がダイアライザー(人工腎臓)です。直径が4センチメートル、全長が30センチメートル程の筒状のプラスチックケースのなかに、髪の毛数本分ほどの細さの「中空糸」と呼ばれる糸が、約1万本入っている構造です。

この中空糸の中はストロー状になっており、側面には小さな分子は通し、大きな分子は通さない微細な穴が開いています。中空糸のストローの内側に血液を、外側に透析液を流すと、血液中の血球や有用なタンパク質など大きな分子は通さず、分子が小さい尿素・尿酸などの老廃物や余分な水分のみが、側面の穴から透析液中に送り出されます。人工透析では、このようにして血液を濾過しています。

 

 

安全性以外にも、多くの機能が求められる接着剤

ダイアライザーのなかで、この中空糸を束ねてケースと接着する役割を果たしているのがポッティング材(接着剤)です。ダイアライザーの製造工程は、筒状のプラスチックケースの中に中空糸を充填し、高速で回転。そこにポッティング材を流し込み、遠心力を使って両端に寄せて固定します。最後に不要な部分をカットして、透析回路と接続するための治具を取り付けて完成させます。

ポッティング材は、透析時に血液と触れるため、高い安全性が求められます。また加工時には中空糸同士を束ねるため、中空糸の外側の隙間には入り込むが、血液を通す内側には浸透しない適度な粘度が必要。さらに、生産性を上げるために最適な速さで固まる硬化性も重要になります。人工腎臓用のポッティング材は、こうしたさまざまな条件を全て満たすことが求められます。

 

30年以上の歴史に裏付けされた確かな技術

この人工腎臓用のポッティング材として、三洋化成が開発した製品が『ポリメディカ』シリーズです。30年以上前に上市した歴史ある製品です。ダイアライザーの需要量が増えるにつれて、生産性を高めるためにポッティング材の硬化時間をさらに短縮したいというお客様の要望に応え、開発を続けてきました。

『ポリメディカ』シリーズは、ポリオールとイソシアネートの2液混合型のウレタン接着剤で、安全性が高く、低粘度・高速硬化を特長としています。三洋化成の強みは、このポッティング材に必要な粘度や硬化速度を自由に設計できるノウハウを持っていることです。通常、低粘度と高速硬化は相反する性能ですが、三洋化成が培ってきたポリオール設計技術は、これらの両立を可能にしたうえ、顧客の要求に応じたカスタマイズも可能にしており、人工腎臓の生産性の向上に大きく役立っています。

また、海外では一般的に使用されている金属触媒を使用していないのも『ポリメディカ』シリーズの特長です。三洋化成の触媒設計技術を駆使した金属フリーの触媒を使用し、より安全性を高めています。今後は、生産性の向上に加え、ポッティング材からの溶出物量を減らすなど、さらなる安全性の追求が求められると予測されており、硬化速度だけでなく、安全性の面でも開発が進んでいます。

『ポリメディカ』シリーズは、安全で質の高い製品を提供し続けることでSDGs3「すべての人に健康と福祉を」に貢献する製品です。今後もさらに良質な製品を、日本はもちろんアジアの国や地域にも広げ、人々の健康な暮らしに貢献していきます。

 

 

当社製品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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