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金属の腐食を防ぐ、ハロゲン(塩素)フリーの抗菌剤

三洋化成ニュース No.541

金属の腐食を防ぐ、ハロゲン(塩素)フリーの抗菌剤

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2023.11.14

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界面活性剤の一つであるカチオン界面活性剤は、抗菌剤としても広く活用されています。
ただし種類によっては金属を腐食させる可能性があるため、使用には注意が必要です。
この金属腐食のリスクを低減しつつ、ハロゲン(塩素)フリーで焼却してもダイオキシンを発生しない界面活性剤型抗菌剤を紹介します。

 

抗菌剤としても利用できる界面活性剤

シャンプーや洗剤などでなじみのある界面活性剤は、物質の境界面で働いて、性質を変化させる物質の総称です。その特性を生かして、洗剤はもとより化粧品や塗料、食品など幅広い用途に活用されています。

界面活性剤は、水になじみやすい親水基と、油などになじみやすい疎水基から構成されており、水に溶けた際の電荷によって、アニオン、カチオン、両性、ノニオンの4種類に分類されます。

なかでも親水基がプラスに帯電するカチオン界面活性剤は、マイナスに帯電した物質の表面に付着して滑りを良くしたり帯電を防止したりする作用があり、柔軟剤やヘアリンスなどに使われています。また、菌やカビなどの細胞もマイナスに帯電しているため、カチオン界面活性剤が付着しやすく、抗菌剤としても利用することができます。

 

即効性のある抗菌作用を持つ、カチオン界面活性剤型抗菌剤

抗菌剤は一般的に、有機系と無機系に分けられます。カチオン界面活性剤型の抗菌剤は有機系抗菌剤に分類されます。

有機系抗菌剤の一番のメリットは即効性が高いところです。一方で、刺激性が高く、物質の表面にとどまりづらく持続性が低いというデメリットがあります。この刺激性が高いという特性から、有機系抗菌剤は人に触れるものに積極的に使用されることは少なく、その多くが工業用途で使用されています。

カチオン界面活性剤型抗菌剤の抗菌作用には、いまだ解明されていないところも多々ありますが、マイナスに帯電しやすい菌やカビの細胞膜に吸着して表面を破壊したり、細胞内部に入り込んで生育に必要な機能を阻害したりすることで、抗菌作用を発揮すると考えられています。

ただ、多くのカチオン界面活性剤型抗菌剤は金属腐食性が高く、繊維用抗菌剤として使用した場合の繊維編機の針、木材用防腐剤として使用した際の木材に打ち込まれた釘など、金属に接触する可能性のあるものには使いづらいという難点がありました。

 

課題となっていた金属腐食性を低減した『オスモリン DA -50』

カチオン界面活性剤の優れた抗菌作用はそのままに、金属腐食性を低減したのが三洋化成の『オスモリン DA -50』です。開発のきっかけは、清潔・快適志向の高まりを背景に、抗菌繊維の需要が高まったこと。それまでの繊維用抗菌剤には、繊維に抗菌剤を混ぜ込んで抗菌処理を施した際、カビなどの真菌に対して十分な抗菌効果がない、金属腐食性があるといった問題がありました。そのため、真菌を含むさまざまな菌に優れた抗菌効果を示し、かつ、編機の針などを錆びさせない抗菌剤が求められていました。三洋化成では、1990年代半ばに開発をスタートさせ、1998年から販売しています。

『オスモリン DA -50』は、カチオン界面活性剤型抗菌剤のなかでも、第4級アンモニウム塩系に分類される抗菌剤です。第4級アンモニウム塩系の抗菌剤では、塩化物イオンを含む塩化ベンザルコニウムや塩化ジデシルジメチルアンモニウムなどがメジャーな成分になりますが、一般的に塩化物イオンなどのハロゲン系イオンが存在すると、金属を腐食させる傾向があります。ちなみに、塩化ジデシルジメチルアンモニウムは、その1%水溶液に一般的な鋼材を浸した場合、約1時間で錆びを確認できるぐらいの腐食性があります。

この塩化物イオンを、酸化力の弱いアジペート(アジピン酸塩)に置き換えたものが『オスモリン DA -50』です。酸化力を低減させることで、抗菌性を保ったまま金属腐食性を低減させ、そのうえ防錆性も高めています。

抗菌作用としては、大腸菌や黄色ブドウ球菌、緑膿菌や青カビ・黒カビなどの真菌など、多くの菌に効果があり、幅広い用途での活用が可能です。さらにハロゲン(塩素)を使用していないため、焼却してもダイオキシンが発生しないというメリットもあります。

 

幅広い分野で活躍が期待される抗菌剤

 

現在は、編機の針などの腐食を防ぐ繊維用の抗菌剤をはじめ、釘やネジなどを錆びさせないための建築用木材の防腐剤に活用されているほか、食品工場、飲食店やホテルの厨房、病院など、抗菌性が求められる場所での除菌洗浄剤や、工場などの金属洗浄浴の防腐剤としても利用が進んでいます。また、ミネラル分の多い硬水中で抗菌性を発揮できるのも大きなメリットです。例えばクーリングタワーの冷却水などは、無機塩類が析出した水あか(スケール)のできやすい環境下で抗菌性が求められ、こうした場面での活躍も期待できます。

金属腐食性の低減により活用の範囲が広がっている『オスモリン DA -50』は、抗菌剤の機能としてはSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に、ハロゲンフリーの機能としては目標12「つくる責任 つかう責任」に貢献する製品です。今後は、即効性があり、幅広い菌・カビに対して抗菌・防カビ効果を発揮し、ハロゲンフリーで金属腐食性が低いといった『オスモリン DA -50』の優れた特長をさらにPRし、より多くのお客様にお使いいただけるよう販売活動を進めていく予定です。

また、一般的に有機系抗菌剤は、無機系抗菌剤と比べて耐熱性や持続性に劣るため、研究開発では、カチオン界面活性剤型抗菌剤に共通するこれらの弱点を克服すべく、高温にさらされた後でも抗菌性を損なわないもの、対象物にとどまり、より長く抗菌性を発揮するものなど、さらに性能を高める製品の構想も進めています。

三洋化成ではこれからも、コロナ禍で抗菌意識の高まった世界へ向け、有機系抗菌剤の長所である即効性を生かしつつ、さらに高度な製品を開発し、提供していきます。

 

 

当社製品および開発品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。
使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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