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多彩な分野で活躍する、ポリウレタンフォームを支える技術

三洋化成ニュース No.543

多彩な分野で活躍する、ポリウレタンフォームを支える技術

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2024.04.11

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ポリウレタンフォーム用ポリオール『サンニックス』シリーズ

ポリウレタンフォームは、セルと呼ばれる気泡を有するスポンジ状の樹脂です。クッションのような柔らかいもの(軟質)から断熱ボードなど硬いもの(硬質)まであり、用途によって硬さを変えたり、さまざまな機能を付加することができます。幅広い分野で利用されているポリウレタンフォームの原料となる製品を紹介します。

樹脂化反応が生み出すポリウレタンフォーム

ポリウレタンは、ポリオールなどの活性水素を有する化合物を、反応の開始物質(出発物質)とし、そこにNCOという官能基を持つ化合物ポリイソシアネートを反応させてできる樹脂の一つです。このポリウレタンを発泡させ、内部にセル(気泡)を持たせたものを、ポリウレタンフォーム、またはウレタンフォームと呼びます。

ポリオールとポリイソシアネートをそのまま反応させると、セルのないポリウレタン樹脂が出来上がります。この反応を樹脂化反応と呼びます。ポリウレタン樹脂は、靴底や合成皮革、リュックサックなどウレタン繊維で編んだような製品、陸上競技のトラックなど、防水性がありゴムのような感触のもの、家具やフローリング、ベランダなどの塗装、接着剤、シーリング材など塗膜形成能や密着性を生かした用途などに使われています。

樹脂化反応の際に、水などの起泡剤を加えると、水とポリイソシアネートが反応し、CO2が発生します。するとこのCO2が樹脂内部にセルを形成します。これを泡化反応と呼びます。ポリウレタンフォームは、この樹脂化反応と泡化反応の二つの化学的な反応を同時に起こすことで完成する多孔質の樹脂です。

 

硬さを調整するカギは分子の長さと分子をつなぐ官能基の数

ポリウレタンフォームは、軟質から硬質まで、さまざまな硬さに調整できるのが特徴です。そのため、自動車の内装材や家具、マットレスや枕といった寝具、衣類、建材など、さまざまな分野で活用されています。またそのなかで、軟質ポリウレタンフォームを取り上げてみると、一般的な出荷量では、自動車の分野が半数以上と最も多く、次いで寝具の分野で数多く利用されています。寝具でよくPRされている低反発や高反発といった機能も、一部はポリウレタンフォームの硬さを調整することで実現しています。

ポリウレタンフォームの硬さは、基本的には分子の長さと分子同士をつなぐ官能基の数で変わってきます。軟質の場合は、分子が長くそれらをつなぐ官能基数も少ないので、伸び縮みの幅が大きくなり柔らかいフォームになります。一方硬質の場合は、分子が短く、多くの官能基で分子同士をつなぐため、硬いフォームになります。こうした硬さの違いを出すための分子の長さや官能基の数は、使用する原料の分子設計や配合設計などによって実現されています。

ポリウレタンフォーム原料のなかでも、特にアルコールなどの活性水素を有する出発物質に、アルキレンオキサイド(AO) の一種であるプロピレンオキサイド(PO)やエチレンオキサイド(EO)などを高圧重合で付加して製造するポリプロピレングリコール(PPG / ポリエーテルポリオールの1種)は、出発物質の種類、官能基数に関わる活性水素の数、AOを付加する数、付加する位置、その配列など、バリエーション豊富に設計することが可能なため、広く活用されています。

三洋化成の『サンニックス』シリーズはその代表的な製品であり、国内のほとんどのポリウレタンフォームメーカーで使われ、海外でも数多く使用されています。

 

アメリカからの技術を導入し生まれた製品

三洋化成では1960年に国産第1号となるポリウレタンフォーム用のPPGを開発し、『サンニックス』の名称で上市しています。一つのきっかけは1955年にアメリカで農薬乳化剤の技術を学び、持ち帰った高圧重合の技術です。当時はあくまで乳化剤となるEOの付加重合物の製造が目的でした。

その後の1959年、三洋化成は、アメリカでウレタンフォームの原料に、PPGが使われ始めたという情報をキャッチします。くしくも日本では石油化学が拡大し始めていた頃で、将来の需要が伸びると予測した三洋化成は、日本でのポリオールのパイオニアを目指し、開発に着手しました。

同年には、ポリオールのプロセス開発と並行して、当時の資本金のほぼ倍の金額を投資し、以前アメリカで学んだ高圧重合の技術を用いたPPGの生産工場を建設します。ただし、開発は一筋縄ではいかず、研究から製造、商品化まで、あらゆる段階で何度も失敗を繰り返す苦難を乗り越え1960年、商品化に成功したのでした。

翌1961年からは、データに基づく技術営業を始めます。当初は寝具用マットレスフォームが主流でしたが、さまざまな分野に展開し、『サンニックス』シリーズは、現在では三洋化成の基盤事業の一つになっています。

 

新中期経営計画2025を推進中

現在ポリウレタンフォームは、業界を挙げてリサイクルやバイオマス原料の活用といった、環境に配慮した開発の機運が高まっています。製品そのものについても、例えば寝具での消臭機能の付加など、QOLの向上に対する新たなニーズも高まっています。

このような時代の変化に合わせて、三洋化成でも新中期経営計画2025において、環境負荷低減などの社会課題の解決やQOLの向上を基本方針に掲げ、ウレタン事業でも環境への配慮や付加価値を持たせた製品開発を進めています。その一方で、「ものづくり大改革」も推進しており、生産プロセスの改善や、原料とその調達先の見直しも含めたサプライチェーン全体での効率化、生産工程におけるCO2削減などにも取り組んでいます。

幅広い分野で活用されているポリウレタンフォームは、SDGsの観点からもさまざまな役割を担う製品です。今後も、新たな製品の開発や環境負荷低減に向けた活動にチャレンジしていきます。

 

 

当社製品および開発品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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