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三洋化成ニュース No.505
2017.11.01
IT機器や通信ネットワークには、半導体、ハードディスクドライブ(HDD)などの精密部品が使われています。精密部品は構成する部品が微小であったり、高精度な精密加工が必要であることから、少しのごみや汚れが致命的な欠陥を引き起こすことがあり、製品の信頼性を確保するには「きれいさ」が不可欠となっています。
そのため、精密部品を加工する時は、研磨工程で発生する研磨材や研磨くずのほか、クーラント(切削油など)の除去、さらには空気中に漂うホコリなど環境に由来する異物まで完全に取り除く必要があるのです。半導体は家電製品をはじめ身の回りの電子機器に使われています。ITネットワークの分野ではスマートフォンやパソコンの頭脳として、フラッシュメモリなどの記憶媒体やC P U(演算装置)などに使用されています。HDDはパソコンの記録媒体として多く使用されてきましたが、最近ではクラウド化によりデータサーバーへの用途に比重を移しています。
汚れを取り除いてきれいにするには洗浄が必要です。油汚れに対しては、精密部品も食器・衣類も洗浄の原理は同じです。洗浄剤が隙間に入って汚れを引きはがし、乳化、分散して再付着を防ぐことで汚れを洗浄しています。しかし、求められる洗浄のレベルはかなり違います。汚れやごみのサイズが小さいほど取れにくく、また再付着しやすくなるため、精密部品ではより精度の高い洗浄が必要となります。
特にHDDの場合は、粒子1個でも残ってはいけないレベルの「きれいさ」が要求されます。理由は、HDDの磁気ヘッドとディスク表面の間はわずか10ナノメートルしかなく、その隙間に汚れや異物が残ってはいけないからです。磁気ヘッドをジャンボジェット機に置き換えると、地上から0.5ミリメートルの高さを超低空飛行しているのと同じぐらいの隙間をきれいにするレベルの洗浄が求められているのです。
ハードディスク基板や半導体の洗浄には水系の洗浄剤が使われていますが、小型化、高性能化に伴い、さらに高性能な洗浄剤が求められるようになっています。
水系洗浄、加工油や研磨くずなどの汚れを除去する一方で、酸化による腐食や変色、洗浄剤成分の残留による汚れなどの問題を抱えています。それ故、酸化を防ぐためのpHなどのコントロール、水に溶けやすく残りにくい組成設計などが工夫されています。水系洗浄に使用する水系洗浄剤は、界面活性剤と酸・アルカリなどで構成されており、洗浄する対象や工程によって、アルカリ系、中性系、酸性系などが使い分けられています。
HDDの小型化、高機能化に伴い、ハードディスク基板の高密度化が進み、研磨粒子や研磨くずのサイズが小さくなったことを受けて、三洋化成では、より洗浄性の高い洗浄剤を開発してきました。その開発の過程で酸化防止や表面清浄化といった高度な界面制御技術と微細なごみや汚れを分析する評価技術を確立してきました。
三洋化成は、精密部品の加工時に適した洗浄剤として、精密部品用水系洗浄剤『ケミクリーン』シリーズを提供しています。当社の提供する洗浄剤は、濡れ・浸透性と再付着防止性に優れ、お客様から高い評価を得ています。これらの製品は精密部品洗浄に用いられるため、クラス1000レベルのクリーン設備を持つ生産設備で製造しています。
さらに近年は、変化する市場のニーズに応えて、ハードディスク基板洗浄で培った界面制御技術と評価技術を活かし、微細化が進む半導体の製造工程に用いるレジスト剝離剤や金属エッチング剤を開発しています。今後も精密洗浄機能を持つ製品の開発を進め、ITネットワークの発展に寄与していきます。