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より安全に、薬を効かせたい場所に届ける技術

三洋化成ニュース No.544

より安全に、薬を効かせたい場所に届ける技術

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2024.07.11

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経口固形医薬品用コーティング剤『ポリキッドPA-30』

経口固形医薬品用コーティング剤は、固形の飲み薬に使用されるもので、薬を包むことで、飲みやすさや保存性を向上させたり、成分を必要な場所に的確に届ける役割などを果たしています。薬の効能を最大限に引き出すために使用される製品を紹介します。

ほとんどの固形の飲み薬に使用されているコーティング剤

私たちが病気の際に口にする経口固形医薬品、いわゆる固形の飲み薬には、大きく分けて、錠剤、顆粒、カプセルの3種があります。

通常、薬の有効成分は、直接口に含むと苦くて飲みにくいものや、光や湿気、酸素に弱いものが多いため、多くの経口固形医薬品にはコーティング剤が使用されており、苦みや臭気のマスキング、のどの通りやすさ、保存性の向上、着色などの役割を果たしています。それに加えてコーティング剤は、体内で有効成分の放出を制御するという重要な役割も担っています。

 

薬効を最大に引き出すドラッグデリバリーシステム

通常飲み薬は、食べ物と同様、胃を経由して細かくなり、有効成分が主に小腸から体内に吸収されます。この際、「必要な量を」「必要な時に」「必要な場所で」放出するよう制御することで、治療効果を向上させたり、副作用を低減したりすることができます。このような薬の制御システムをドラッグデリバリーシステム(DDS)といいます。

DDSはこうした薬効の向上だけでなく、少ない有効成分で多くの医薬品を製造できることから、生産量の限られた有効成分でも薬として多くの患者さんに届けられたり、コストを抑えることで安価に医薬品を提供できたりするというメリットもあります。

このDDSには、いくつかの制御機能があります。代表的なものとしては、一つは「徐放性」。体内で徐々に溶けていくため、服用回数を減らせるうえ、必要な濃度を必要な時間維持できるので、治療効果を向上させることができます。

また胃で溶けずに腸で溶ける機能「腸溶性」は、胃酸に弱い有効成分を効率的に小腸に届けることができるほか、胃に負担をかける有効成分が胃を荒らすといった副作用を低減することもできます。

さらに現在では、例えばがん細胞など、ターゲットとなる特定の細胞だけに有効成分を集中させ、副作用を極力抑えるような、標的指向型と呼ばれる高度なDDSも活用されています。

 

有効成分を胃液から守り、的確に小腸まで届ける『ポリキッドPA-30』

こうしたDDSの機能のなかで、「腸溶性」のコーティング剤として、広く活用されているのが三洋化成の『ポリキッドPA-30』です。胃で溶けずに小腸で溶けるのが最大の特徴で、有効成分を胃液から守ったり、胃への副作用を防いだりしながら、有効成分を小腸まで届かせる役割を果たします。

この『ポリキッドPA-30』は、三洋化成が2003年に上市した医薬品添加物です。当時、「腸溶性」のコーティング剤はドイツのメーカーだけが保有していた製品でしたが、国内製薬メーカーから国産化の要望を受け、開発しました。

『ポリキッドPA-30』は、アクリル酸エチルとメタクリル酸の二つのモノマーからなる共重合体です。このポリマーは、pHによって溶解性が変わる「pH応答性ポリマー」と呼ばれるもので、胃のpH1.2~3.5の消化液には溶けず、小腸のpH5~7の消化液に溶ける性質を持っています。そのため、医薬品の有効成分をこのポリマーでコーティングすることで、有効成分を効率的に腸まで届けることができるのです。

こうした特性を生かし、『ポリキッドPA-30』は、酸に弱い性質を持つ胃潰瘍の治療薬や、胃障害を引き起こす恐れのある解熱鎮痛剤など、さまざまな医薬品のコーティング剤に使用されています。

また医薬品添加物に一番に求められる安全性の面でも、有機溶剤を含まない水分散系の製品であることや、生物由来の原料を使用していないといった特長を持っています。さらに生産についても、製造設備や品質管理における厳しい基準を満たした体制を構築しており、厳格な管理体制のもと、信頼性の高い製品を安定供給しています。

 

世界の人々が求める医薬品を、安価かつ安定的に提供する

『ポリキッドPA-30』は、日本の医薬品添加物規格(JPE)だけでなく、アメリカやヨーロッパの薬局方(USP-NF、EP)に対応しており、世界中の国で使用されるポテンシャルを持っています。世界に向け、多くの人が求める医薬品を、安価かつ安定的に提供するという意味でも、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に貢献できる製品といえます。三洋化成では引き続き『ポリキッドPA-30』活用の場を、途上国も含めたあらゆる国々に広げていきたいと考えています。

一方で、これまでは低分子の医薬品がメインだったため、医薬品添加物もこれらを対象にしたものが主流でしたが、現在は抗体医薬のような高分子医薬品、ペプチドや核酸といった中分子医薬品など多様な医薬品の開発が進み、新たな医薬品添加物が求められています。さらにQOL向上や医療費の低減といった課題への対応も急務で、DDSへのニーズは、今後もさらに多様化し、加速していくことが予測されます。

三洋化成は『ポリキッドPA -30』だけでなく、『マクロゴール』シリーズなどの医薬品関連製品を多数保有しており、これらをベースに、新たなニーズに対応できる製品開発も進めています。今後も、これらの製品を組み合わせた最適な処方の提案や、新技術の開発を進め、世界の人々の健康とQOL向上に貢献していきます。

 

■ポリキッド PA-30 の製品情報

 

当社製品および開発品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

 

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