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三洋化成ニュース No.545
2024.10.11
ほとんどの建築物の外壁は、美観の向上と建物の保護を目的に塗装が施されています。しかし、塗装時に気泡が発生すると、美観を損ね、保護機能にも悪影響を及ぼします。これを抑えるのが消泡剤です。従来の消泡機能に加え、塗膜の低汚染性を妨げず、建物の外観品質と耐久性を向上させるサンノプコ株式会社の製品を紹介します。
建築塗料は基本的に、好みの色で外観を美しくする「意匠性の付与」と、コーティングによる「建物の保護」という二つの役割を担っています。
この塗装を施す際に気を付けなければならないのが、気泡の発生です。気泡が残ると美観を損ねるだけでなく、壁と塗膜の密着不良や塗膜の強度低下によって保護機能が損なわれるなどの問題が起こります。
言い換えれば、気泡をなくすことでこれらの課題はおおむね解消できます。そのため塗料では、分散剤や湿潤剤などの添加剤を起泡しにくいものにして塗料自体の泡立ちを抑えたり、消泡剤を用いてできた泡を消したりといった対策が取られています。
ただ消泡剤は、それを入れることによって、周辺をはじいて塗装面のへこみを生じさせる「ハジキ」と呼ばれる現象や、塗膜の光沢を低下させるといった問題が起こりやすくなります。そのため消泡剤には、これらの不具合を抑える性能も求められます。
消泡剤は、鉱物油やシリコーンオイルなど、疎水性で表面張力が低い液体が主成分です。これらが液中で分散し、泡膜に入り込んで消泡効果を発揮します。
塗料の種類には水系と溶剤系があり、水系塗料には、鉱物油系、シリコーン系、ポリエーテル系の消泡剤が、溶剤系塗料には、シリコーン系やアクリル系のポリマーなどの消泡剤が、それぞれに使われています。消泡剤の成分によってはつやを落としてしまうものもあるため、塗料の「つやあり」、「つやなし」といった種類によっても適した成分を厳選し、組成の設計を行う必要があります。
この消泡剤を、長年開発、販売しているのがサンノプコ株式会社です。サンノプコ社は1966年に、アメリカ・ノプコケミカルカンパニーと三洋化成との合弁会社として誕生した会社です。以来、ノプコケミカルカンパニーの消泡技術に三洋化成の界面活性剤技術を組み合わせ、さまざまな分野で多くの消泡剤を開発してきました。汎用的な鉱物油系消泡剤をメインに、シリコーン系や植物油系など、お客様のニーズに合わせた消泡剤を多数上市しています。
『SNデフォーマー 395』は2011年に上市された製品で、ポリエーテルを主成分としています。
消泡性を発揮するには疎水性で表面張力が低いことが前提となるため、消泡剤にはシリコーン系の物質も多く使用されます。ただ、シリコーン系は疎水性が非常に高いため、外壁の塗装に使用した場合、同じ疎水性を持つ空気中の汚れ成分が吸着しやすく、雨でも流れにくいといった課題があります。塗膜の汚れが雨で流れやすい低汚染性(セルフクリーニング性能)を損なわないためには、消泡機能を維持しながら、高すぎず適度な疎水性に保つことが必要となります。
ポリエーテルを用いて、疎水性と表面張力のバランスを調整したのが『SNデフォーマー 395』です。シリコーン系と同等の消泡性を持ちながら、塗膜の低汚染性を損なわないため、シリコーン系よりも塗膜の美しさを維持することが可能になりました。加えてシリコーン系で発生しやすい「ハジキ」の現象も低減しており、低汚染対応の塗料に添加することで、外観品質と耐久性を向上させる消泡剤として広く紹介しています。
建築の分野では溶剤塗料を使うことによる臭気の問題などもあり、現在ほとんどが水系塗料に置き換わっています。また建築用塗料では低汚染性に加え、揮発性有機化合物の発生を抑える低VOC、雨風や日差しに強い高耐候性、熱を遮る遮熱性といった性能が付加、向上されており、性能の多様化によって使用される樹脂も複雑なものになってきています。
そのため消泡剤も、これらの機能を阻害しないあるいは補助する性能が必要となっています。サンノプコ社ではこうした樹脂の高機能化に合わせた開発を続ける一方で、環境にも配慮した組成設計の添加剤開発も進めています。
『SNデフォーマー 395』は現在、中国、東南アジア、インドなどにも展開していますが、これらの地域でも高級志向が進み、高機能な塗料が求められています。今後もインドを中心に、海外に広く普及させていく予定です。
塗料の低汚染性を損なわないため、建物の長寿命化に貢献できる『SNデフォーマー 395』は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」に貢献する製品です。サンノプコ社では、今後も塗料のニーズに沿った添加剤の開発で社会に貢献していきます。
■SNデフォーマー 395 の性状 | ■低汚染性試験(比較) |
当社製品および開発品をお取り扱いいただく際は、当社営業までお問い合わせください。また必ず「安全データシート」(SDS)を事前にお読みください。使用される用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。